アベノマスクはいまや付けている人も見かけないが(時事通信フォト)
経済面でも「運のよさ」に支えられた。経済評論家で同志社大学大学院教授の浜矩子さんが語る。
「私は“絶望がもたらした期待”と呼んでいるのですが、安倍さんが首相に返り咲いた’12年というのは特に中小零細企業が苦しい状況にあって、デフレ脱却にめどをつけてもらわないと夜逃げするしかないところまで追い込まれていた。そこに安倍さん一派が円安で経済を成長させると宣伝した。絶望的な状態にあった人々は藁にもすがるしかなかったわけです。
アベノミクスで株価が上がり主に大企業の業績は回復したが、中小零細企業の実質賃金は上がっていないなど、経済の二極分化を招いた。実のところ、日本経済は2011年がいちばん底だったから、アベノミクスでなくても経済は上向いていたという分析もある。でも、経営状態がよくない中小零細企業の経営者や社員にしてみれば、大企業の業績がよくなってきたから、もう少し待てば自分たちもよくなるんじゃないかと、これまで安倍政権に政策を託してきたのではないかと思う」
政治的には野党不信が極まり、経済的には「どん底」という状況で、国民には安倍首相という選択肢しかなかった。
もちろん、それだけで足掛け8年の長期政権を維持できたわけではない。東京新聞記者の望月衣塑子さんは、安倍政権の「マスコミ操縦」の巧妙さをあげる。
「歴代首相にはみんな親しい記者がいたと思うが、総理総裁となって権力の座につくと、どの新聞のインタビューにも応じるというようにバランスをとって等距離でつきあうという節度があったが、安倍さんは違う。自分に好意的なメディアを選んで出演するが、批判的なメディアには攻撃的になる。そうやってメディアの分断を図った」
その結果、権力者ににらまれたくない一心ですり寄るメディアや記者も出てくる。巧妙にメディアを取り込んで情報をコントロールし、政権の不祥事があると、「一億総活躍」とか、「女性が輝く社会」といったスローガンを打ち出しては、それを親安倍のメディアに大きく報道させることで国民の目をそらしてきた。
※女性セブン2020年7月23日号