3月の下旬から続いたリモート勤務は、首都圏に敷かれていた緊急事態宣言の終わりとともに終了。同業他社では引き続きリモート方式を導入しているところも多いというが、大江さんの会社ではそれは叶わなかった。
「以前と同じ生活のはずなんですけど、この3ヶ月と比較しているからか、とても辛く感じます。何よりも非効率。ストレスのせいか一週間で3キロも増え、以前はなかった抜け毛まで……。上司にも掛け合ったんですが、どうしてもリモートはダメだと」(大江さん)
大江さんが上司とのやり取りの中で気が付いたのは、例えば、リモート勤務の社員と出社した社員がそれぞれ同じ量の業務をこなしたとしても、上司からの評価は「出社社員」の方が高い傾向にあるということである。大江さん自身が実際に試してみたところ、より早く仕事をこなし上司に報告したリモート勤務の同僚より、合間にタバコを吸ったりして時間をかけ、同じような内容の報告をした出社社員の方が評価は高かった。
「上司は、仕事は結果ではなくその過程も重要、見えている場所で丁寧な仕事をしている人間の方が評価は高い、時間は関係ない……と言いましたけど、実は引っ掛けだったんですよ」(大江さん)
大江さんが上司にかけたトラップ、それはリモート勤務社員と出社社員の部下2人の報告を入れ替えておくというものだった。上司は「やはり仕事は会社でするに限る」と息巻いていたが、この事実を伝えたところ激怒。仕事で遊ぶなと烈火のごとく叱責されたという。
「小学生の頃以来です、あんなに怒られたのは(笑)。ただ、それをみていた部下や一部の上司たちは理解を示してくれはじめました。今はお得意先のリモート体制を構築するため、どうしても外に出る業務もありますが、落ち着いたら、業務体制の刷新にかかることになりました。いや……あの生活に慣れちゃったら、今まで通りにやるのがバカらしいじゃないですか」(大江さん)
「コロナ後」の生活が辛い、と感じている人は思いのほかいそうだが、同志達と手を組み、効率の良い「新たな生活」ができるように動いてみるのも、悪くないかもしれない。