こうした状況なだけに、事務所の中には「YouTubeでの収入には関与しない。ただし、テレビやイベントの仕事はちゃんとやるように」といった考え方をし、繋ぎとめようとする例もある。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、木下さんについても「事務所が辞めさせたというよりも本人が自由にやりたくて自発的に辞めた側面もあるのでは」と語る。
「昨今、若者はテレビを見なくなっていてYouTubeやSNSを見ることの方が多いのでは。若手芸人に話を聞いても、『特にテレビに出るこだわりはない』なんて普通に言いますからね。今のベテラン芸能人ほどテレビを重要視していない。『テレビに出なくてもネットで活動できるからそれでもいい』という声さえ聞こえます。木下さんにしても、インスタやブログは消しましたが、別名義で復活すれば再び相当な数のフォロワーは獲得できるでしょう」(中川氏)
とはいっても、テレビの力で知名度を獲得したことは事実なわけで、これからの事務所はその「恩義」をいつまで芸能人に感じてもらえるか、ということに加え、どれだけ実入りの良い「おいしい」仕事を出せるかを考えなくてはならない。
かつて吉本興業の芸人が「ギャラの取り分1:9」などと自虐ネタにしていたが、そうした状況を改めなくては「売れた芸能人の事務所離れ」が進む可能性もある。前出の中川氏はこの状況を「芸能人の家庭教師化」と呼ぶ。
「学生時代、家庭教師の事務所に登録していた友人は時給2500円もらっていました。しかし、親御さんは事務所に5000円払っていました。それを友人は知っているものだから、契約期間が切れる前に『事務所との契約を延長しないでもらい、その代わりぼくに直接3500円ください』とオファーし、事務所を脱退するのです。当時、こうやっている友人が本当に多くいました。こうした状況が芸能界にもやってきているのかもしれません」
錦戸亮(35才)や手越祐也(32才)などジャニーズ事務所からの退所も相次ぐが、彼らにとっては事務所が「売れるまでの育成・宣伝機関」になっているのかもしれない。