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2020.07.22 07:00  SUUMOジャーナル

緊急事態宣言の発令前~解除後、首都圏の住宅市況はどう動いた?

(画像提供:PIXTA)

東日本不動産流通機構(以下、東日本レインズ)は、首都圏の不動産流通市場の6月度の動向をまとめた、「月例速報Market Watch サマリーレポート2020年6月度」を発表した。この月例速報では、過去1年間の月次の動向を分析している。つまり、緊急事態宣言の発令前から解除後の期間の動向が分かるわけだ。詳しく見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「月例速報Market Watch サマリーレポート 2020年6月度」を発表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)
「月例速報Market Watch 2020年6月度」を発表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)

東京都では3月4月に中古マンション価格が前年比割れするも、5月6月で回復東日本レインズの月例速報6月度版から、中古マンションの動向について見ていこう。市場動向は、不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムである、『REINS=Real Estate Information Network System』のデータを分析したもので、以下の物件について集計している。

「成約物件=その月にレインズに契約が成立したと報告された物件」
「新規登録物件=その月にレインズに新たに登録された物件」
「在庫物件=その月の末時点でレインズに登録されている物件」

まず、中古マンションの成約価格の動向を見ていこう。【画像1】が首都圏全体と東京都の成約物件の平米単価の推移だ。月ごとに上がり下がりがあるものの、2020年2月まではいずれの月も前年より成約単価は上昇している。新築マンションの価格上昇トレンドを受けて、首都圏の中古マンションの価格も上昇トレンドにあったことが分かる。

その後、新型コロナウイルス感染が広がりを見せるなか、首都圏では4月に、東京都では3月と4月に成約単価が対前年同月比で下落となったが、5月・6月には対前年比で上昇に転じている。最新の6月度では、首都圏で53.48万円/平米、東京都で70.19万円/平米となり、いずれも前年6月より高い単価となっている。

こうして見ていくと、2020年6月までの中古マンションの価格トレンドについては、コロナ禍で下落し続けるといった状況ではないといえる。

中古マンション(首都圏・東京都)の成約m2単価(出典:東日本レインズ「月例速報Market Watch 2020年6月度」をもとにSUUMOジャーナル編集部作成)

中古マンションの取引件数が4月5月で大きく減少し、6月で回復基調に実は注目したいのは、成約した件数や新たに売り出した新規登録件数のほうだ。

【画像2】は、首都圏全体と東京都の成約件数および新規登録件数の推移。住宅の売買の取引件数は、例年では4月の新生活に向けた2月・3月・4月で増える。月例速報6月度を見ると、たしかに2月と3月で件数が増えているが、4月・5月で件数が大きく減り、6月で回復するといった動きになっている。

通常は3月が取引件数のピークになるが、この3月は件数がそこまで多くなっていないことから、3月から新型コロナの影響を受けはじめたと見ていいだろう。緊急事態宣言が出た4月になると取引件数は大きく落ち込み、その状況は5月も継続した。緊急事態宣言解除後の6月になると取引件数が増えた状況なので、緊急事態宣言の影響が強く見られる。

つまり、いつもはこの時期に物件を売ったり買ったりしている人が、コロナ禍で様子見をしていることがうかがえる。

成約物件も新規登録物件も同じような動きではあるが、4月・5月の取引件数の落ち込みは、特に成約物件のほうが新規登録物件より大きい。緊急事態宣言下で物件を売りに出す人よりも買う人のほうが、より多く様子見をしたということだろう。

中古マンション(首都圏・東京都)の成約件数および新規登録件数(出典:東日本レインズ「月例速報Market Watch 2020年6月度」をもとにSUUMOジャーナル編集部作成)

住宅の取引件数は回復する?抑制される?では、様子見をしている人たちは、感染防止対策がとられるなかで、物件の検討を始めて契約に向かうのか、それとも売買を断念するのか、どちらになるのだろう?

リクルート住まいカンパニーが5月に実施した「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」によると、緊急事態宣言以降に住宅の購入・建築やリフォームの検討を行った人で、新型コロナ感染拡大の住まい探しへの影響の有無について聞いたところ、最も多いのは「影響はない」の34%だった。

また、「検討を休止した、いったん様子見にした」(24%)、「モデルルーム・モデルハウス・住宅展示場・不動産店舗・実物物件を見に行くことをやめた」(23%)、「検討を中止した」(7%)と、住まい探しを“抑制”した人がいた一方で、「住まい探しの後押しになった」(16%)、「住まい探し始めのきっかけになった」(15%)、「契約の後押しになった」(10%)と、むしろ住まい探しが“促進”されたという人もいたことが分かった。

コロナ拡大の住まい探しへの影響(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」より転載)

同じ調査で「住み替えの検討のきっかけ」を聞いているが、結婚や子どもの誕生、入園・入学などのライフステージの変化や、転勤や転職による勤務先の移動など、住まい探しには常に一定の需要がある。これに加えて、「在宅勤務になった」ことをきっかけに挙げる人もおり、新たな需要も発生していることが分かった。

つまり、緊急事態宣言下では、各家庭の生活事情による住み替え理由の度合いなどによって、継続して住まい探しをしたり、中断・中止をしたり、積極的になったりという状況だったと考えられる。感染予防対策がとられるなか、今後この人たちが住まい探しに動くのかどうかに注目していきたい。

なお、新築マンションの動向についても触れておこう。不動産経済研究所が「首都圏マンション市場動向2020年上半期(1~6月)」を発表した。これによると、首都圏の新築マンションの供給戸数は対前年比44.2%減の7497戸と大幅に減った。一方、平米単価は103.1万円となり対前年比13.7%増で上昇トレンドが続いている。

この記事で、新築マンションの動向を大きく取り上げなかったのは、緊急事態宣言により大手のデベロッパーがモデルルームをクローズし、新規の集客活動をストップしたからだ。最近になって、オンライン見学を始めたり、予約制にするなど感染予防対策をとったうえで新規集客活動を開始する新築マンションが増え始めた。オープンした後の集客状況に注視する必要があるだろう。

ちなみに、分譲マンションの賃料については、東京カンテイが「三大都市圏・主要都市別/分譲マンション賃料月別推移(首都圏6月)」を発表している。これによると、首都圏の分譲マンション賃料は6月で、平米単価3108円となり、5カ月連続で上昇している。

景気の影響を受けやすいマンション市況について、首都圏の市場動向を見ると、価格よりもむしろ取引件数に影響が大きく出ているようだ。緊急事態宣言解除後の6月のデータでは回復傾向も見られるが、いまだ続くコロナ禍のなか、このまま回復するのかはまだ不透明だ。住まい探しをしたい人が、安心して探せる状況に早くなってほしいと願うばかりだ。

【協力】株式会社不動産経済研究所 株式会社東京カンテイ

(山本 久美子)

https://www.news-postseven.com/wp-content/themes/nps2019_pc/images/SUUMOジャーナル

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