中国では寮で共同生活を送る大学生が多く、キャンパスはいわゆる「3密」となっている。大学の多くは現在も閉鎖され、オンラインで授業が行われているが、いずれは多くの学生が戻ってくる。同大学はそのときに備え、関係者の移動や教室などの入室、指導教員との連絡体制を一元管理できるシステムを構築したのだった。
マスク抽選購入を透明化
感染が落ち着いてくると、企業の活動再開など経済・生活支援にブロックチェーンが使われるようになった。
北京市は中小零細企業向け経済対策の1つとして、「ブロックチェーンを活用した債権債務管理プラットフォーム」を2月7日に立ち上げた。中小企業の売掛金の存在をオンラインで確認できるようにし、中小企業がその証明に基づいて融資を申請することができる。
銀行に対しても融資審査、与信管理、融資管理をサポートし、全ての流れをブロックチェーン上で管理することで、資金繰りが逼迫している中小零細企業が迅速に運転資金を得られることを目的としていた。
江蘇省の蘇州市では同じ頃、ブロックチェーンを活用したマスク予約販売プラットフォームが開設された。市民はQRコードを使ってユーザー登録すると抽選に参加でき、当選者はマスクを5枚6.5元(約99円)で購入できるようになった。
店頭でマスクを販売すると人が殺到して感染リスクが高まってしまうため、2月に入ると中国各地でオンライン予約を受け付け、オフラインで受け取る方式が導入されるようになった。蘇州市はブロックチェーンを活用することで、アカウントの二重取得などの不正行為を防止し、ユーザー登録からマスクの予約、抽選、当選通知の流れを透明化し、追跡できるようにしたのだ。
ファーウェイのブロックチェーンプロジェクトのトップを務める張小軍氏は、中国メディアのインタビューで、ブロックチェーン技術を用いて新型コロナ対策に寄せられた寄付金の流れを透明化するプラットフォームの構築を計画していることを明らかにした。寄付金や支援物資が横流しなどで必要なところに届かないという懸念は、世界中が抱える問題だろう。武漢が封鎖されると、企業が次々にマスクや防護服などの支援物資を湖北省に送ったが、物流の麻痺で配送できないこともあったし、ある社区(日本の町内会や自治体に相当する地域コミュニティ)に寄贈された食料を、幹部数人が分け合って住民に配布しなかった事例も発覚した。