現役時代の石田和雄九段(筆者撮影)

現役時代の石田和雄九段(2004年、筆者撮影)

AIが進化しても、名人の価値は変わらない

──それから時を経て、いまはもうコンピュータが形勢を瞬時に正確に表示する時代になりました。

石田:コンピュータ? 一口に言えば、時代と言うしかないね。それはもうあらがえない。昔は謎に包まれたままね。『名人がやった手だ。これは深い読みだろう』と。みんな『ほーっ』と感心した。羽生さん(善治九段、永世七冠)や大山先生(康晴15世名人)なんかがやったら『神様が指した一手だ』ぐらいに思っておったわけよ。ところがいまや、数字でパンパーンと弾き出されるから、そういう神話は崩れたですね。

──なるほど。どれほどの大名人が指した手でも、好手か悪手か、コンピュータは忖度なく判定します。

石田:でもそれによって名人の地位も低くなるかと言ったら、それは私の危惧していたのとは、ちょっと違いましたよね。コンピュータは化物(ばけもん)みたいなもんで、なんでも凌駕していっちゃう時代だからね。それに負けることは、決して恥ではない。むしろそれに近い手、あるいはこの前(棋聖戦五番勝負第2局)みたいに藤井君がそれを上回る手をやっちゃうと、逆にすごい称賛されるという時代になったんでね。時代です。元に戻すことはできない。将棋界も時代に添ってやっていくしかないな、と思っております。

──石田九段は現在、将棋界最年長のYouTuberとして活躍されてますね。

石田:歳いってからまた再びね、YouTubeで(解説を)やるようになったんで、どうなっちゃってるのかな、って思ってるんです(笑)

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