芸能

岡田健史『大江戸もののけ物語』の月代姿が感じさせた可能性

番組公式サイトより

 役者にとって成功した役柄のイメージから抜け出すことは簡単ではない。逆に、まったく異なる印象を植え付けることができれば、それは大きな伸びしろを意味する。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が気鋭の俳優について指摘する。

 * * *
 NHKBSプレミアムのドラマ『大江戸もののけ物語』(金曜午後10時)は見所が満載です。何といってもまず、主人公がフレッシュ。新海一馬を演じるのは「時代劇に初めて取り組む」岡田健史さん。初めて、というわりには月代(さかやき・頭髪を半月形に丸く剃ぐ)姿がよく似合っています。

 岡田さんの名を聞くと即、『中学聖日記』(TBS系2018年)の黒岩晶を思い出してしまう人もきっと多いのではないでしょうか?  10歳年上の教師・末永聖(有村架純)に一目惚れしてしまった中学生・晶を演じた岡田さん。ひたむきでボクトツ、一直線につっ走る青年の印象が刻まれました。

 それは岡田さんの出自のせいもあるかもしれません。そもそも甲子園を目指していた高校球児で、芸能界からスカウトされても断り続けていたとか。高校卒業後も社会人野球に進むつもりだったのが、演劇の面白さに目覚めて方向転換。オーディションに応募し有村架純さんの相手役に大抜擢、19才での鮮烈デビューという、今どき珍しいシンデレラボーイです。

 あの「晶」の印象があまりに強くて、ぎこちない青年のイメージが焼き付いてしまったからこそ、今回の『大江戸もののけ物語』が面白い。シンデレラボーイの月代姿が新鮮です。単に「時代劇の衣装が似合う」というのではありません。相手の言葉や動きを受けて、ビビッドに反応する芝居がいい。生真面目というよりはマイペース、天然の入ったおちゃめな青年の姿も見せている。どこか一歩引いて全体を見ている雰囲気もあって、岡田さんの役者としての幅と可能性を感じます。

 岡田さん演じる主人公・一馬のキャラクターは、心優しく好奇心が旺盛な旗本の次男坊で剣術が苦手。妖怪に興味をもち研究するうちに妖怪仲間ができる。第二話では吉原へ身売りを迫られたおよう(山田杏奈)を助けるため、天の邪鬼(本郷奏多)や猫又(森川葵)、河童(青山美郷)に力を借りつつ、悪役呪々ガエル(石丸謙二郎)と一騎打ち。

 失敗しながら手探りで難題に向かっていくという、ちょっと三枚目風の味わいもある一馬。という岡田さんの魅力に加えて、もう一つの見所ポイントは妖怪たちのビジュアルのすさまじさと面白さです。特殊メイク&CG合成によって演出された独特な容姿が際だっています。天の邪鬼の顔には火焔土器の破片が張り付いているし、河童はぬめぬめした質感で色も不気味、ぎょろりとした目の動きもリアル。猫又は妙に愛嬌があって可愛らしい。

 また、人の姿から化け物になっていく変身のプロセスも見所です。例えば第二話の呪々ガエルは人の邪気を吸うことを好む妖怪。邪気によって顔もお腹もはち切れんばかりパンパンに膨らみ瞳は歪んでいく。舌はニョロリと伸び、他人の首に巻き付く。という変身シーンを見ていると、そう、あの「エクソシスト」の悪魔に憑りつかれるシーンのように怖いのです。それなのに、目は画面に貼り付いてしまう。奇妙なシーンだからこそ、余計に見入ってしまう──ビジュアルの仕掛けが炸裂しています。

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン