• TOP
  • コラム
  • 浅草仲見世、コロナ禍での「家賃16倍増」の影響は?

コラム

2020.08.01 16:00  マネーポストWEB

浅草仲見世、コロナ禍での「家賃16倍増」の影響は?

家賃が改定された浅草仲見世の今は

 国内屈指の観光地として知られる浅草寺(東京・台東区)。ずらりと軒を連ねる仲見世商店街も大勢の観光客で埋め尽くされていたが、4月の緊急事態宣言発令以降、人の姿はぱったりと消えた。7月の4連休中は、仲見世商店街の人通りは以前少ないものの、客足はかなり戻っているように見えた。雷門前では人力車の車夫たちが客引きをし、浴衣に身を包んだ若いカップルが涼しげに散策していく姿があった。

【写真】浴衣の女性も2人、小さな子連れの若い夫婦や、中高年も集まる雷門の今

 完全復活とはいかないまでも、これでひと安心か──。土産物店の店主に聞くと、暗い声でこう語った。

「Go Toキャンペーンも東京は除外されて、来るのは首都圏の人ばかり。いつでも来られるところのお土産なんて買わないでしょ。だから人が歩いているように見えても、売上はまったく戻らない。まさに商売あがったりだね」

 たしかに、店先で足を止める人の姿はほとんどない。間が悪いことに2018年、この仲見世商店街は家賃が大幅値上げされたばかりだ。北海道大学大学院准教授の岡本亮輔氏(宗教社会学)が解説する。

「値上げの直接の原因は、仲見世の建物所有者の変更です。再三の要望に応じて東京都が浅草寺に所有権を返還。それに伴い、浅草寺が固定資産税を支払う必要が出てきたための値上げです」

 改定後の家賃は、なんと16倍に。これまで10平米あたり月額1万5000円という格安の家賃だったが周辺賃料を勘案し、段階的に同25万円まで上がることになっている。

「江戸時代から賑わいをみせた仲見世は、幾度かの賃料改定を経験しています。1885年、家賃は現在の価値で5万~20万円程度だったにもかかわらず、希望者が殺到したと記録されている。又貸しが横行した1912年10月には当時の東京市が賃料を値上げ。さらに、関東大震災で壊滅した後も改修されて家賃が改定されています」(岡本氏)

 戦中は東京大空襲で灰燼に帰し、仲見世は闇市になった。時代に翻弄されながらもたくましく再興し続けたわけだ。

「江戸や明治の時代にも疫病の流行はありました。ただし当時は疫病除けのため人々が神社仏閣に足を運ぶ時代。おそらく寺は賑わったのではないか。浅草寺は1400年といわれる歴史の中で、初めて“人が来ない”危機を迎えているのかもしれません」(岡本氏)

 家賃値上げとコロナ禍のダブルパンチについて、仲見世商店街振興組合に話を聞こうとしたが回答は得られなかった。組合関係者が明かす。

「高齢を理由に店をたたむ人はあったが、家賃滞納とか値上げが理由の撤退は聞かない。むしろ深刻なのはコロナ禍の長期化。このままインバウンドが戻らなければ大家の浅草寺さんも大変なんじゃないかと思って、こちらが心配している」

 浅草寺にも家賃の減免や延納などの要望を受けているかどうか、また寺の経営状況についても聞いた。

「個々の契約についてはお話できないが、今のところ動きはない。この状況が続けば、お賽銭をはじめとする寺の収入も大変です。毎日3回ある定期法要で疫病の早期終息をご祈願しております」(浅草寺土地部)

 この危機を乗り越えれば、浅草寺の長い歴史のひとつに「コロナ禍」が刻まれることだろう。

関連記事

トピックス