20年以上にわたり陽子線治療の第一線で活躍する荻野尚医師(撮影/関谷知幸)

『メディポリス国際陽子線治療センター』のセンター長・荻野尚医師が解説する。

「陽子線治療は切らない治療で、痛みがなく、副作用も非常に少ない。さらに再発がほとんどないといわれています。

 従来の放射線治療はX線を使います。X線は体の中を通り抜ける性質があり、がん細胞を攻撃すると同時に、正常な組織にもダメージを与えるため、副作用や新たながんを誘発するリスクがあります。

 一方、陽子線は水素の原子核を光の速さほどにまで加速させて照射する治療法。病巣をピンポイントで攻撃でき、がん周辺の正常な組織への影響が最小限に抑えられます」

 近年、世界でも急速に広がる陽子線治療の分野で、日本は技術、治療実績で世界をリードする。

 同センターは昨年、国内外から600人を超える人が治療に訪れた。2011年の開設以来、3800件を超える治療実績は、国内18か所の陽子線治療施設の中でも群を抜いている。

「最高齢は99才の肺がんの男性です。手術も抗がん剤も体力的に無理だと諦めていたそうですが根治しました。患者さんへの負担が少ない陽子線治療だからこそです」(荻野さん)

 陽子線治療に年齢の壁はない。90代でも治療がすすめられるのは、なによりも痛みの全くないその治療の楽さにある。

「治療は1日1回で照射時間は約10~30分です。それを週に5回、土日は休み。痛みや熱さは一切なく、照射中に寝てしまうかたも多いですよ。通院治療も可能です」(荻野さん)

 照射回数は部位によって異なるが8~35回。乳がんの場合は26回で治療期間は1か月半ほど。患者のほとんどは隣接するホテルに滞在するという。前出の原田さんは治療期間を「バカンスのように過ごせました」と笑顔で話す。

※女性セブン2020年8月13日号

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