鉄鋼業の生産システムを小売業に取り入れる
生産性や効率性を求める製造業で仕事をしてきた大村氏の目から見ると、小売業は「売り上げ至上主義」でムダが多かった。生産性や効率性は後回し。やる気や根性が重視されていた。
「日本の鉄鋼業の生産システムは日本一」と信じて疑わなかった彼は、1990年に専務取締役に就任すると、このシステムを小売業に取り入れることを決意する。
主な改革点は3つ。第一は、店舗運営と商品管理を核とした徹底したローコスト経営。そして、低価格路線の継続と商品の品揃え。最後は積極的な出店による販売網の確立である。シンプル・イズ・ベストのやり方を徹底させた。
最初に取り組んだのが店内のレイアウトや陳列方法の改善である。幅広い通路を設定し、すべての商品をハンガーで吊り下げた。当時の小売業では、ワゴン・平台で販売するのが常識だったが、これを撤去した。
「小売業のイロハも分からない若造が」と反対が多かったが、実績が上がると、不満を口にする人はいなくなった。吊り下げ方式を採用したことで、お母さんはデザインやサイズが一目で分る。子どもと手をつなぎながら商品を選ぶことができたのだ。
一方、店側にとっても、洋服を畳む手間が省けた。この結果、客1人の滞在時間は他社よりも20分短くなったが、1人当たりの購入点数は平均4~5点、金額にして3000円をキープできた。
店舗は標準化した。全国どの店舗も売り場面積は約200坪。平屋建てのワンフロア。ベビーカーで移動しやすく、商品の出し入れを簡単しやすくするためだ。通路の幅は2.5メートルで統一した。
大村氏は製造業の合理化手法をベースにした徹底したローコスト経営で、200坪以上の広さの店をたった2人の、しかもパート社員で運営できるようにしたのである。