空港検疫を視察する加藤勝信厚生労働相(右から2人目。厚生労働省提供。時事通信フォト)

 そもそも、「空港からの移動手段を確保すること」などと言っても、「防疫タクシー」も「防疫バス」などもつくらず、あまりに無責任すぎないか。多くの入国許可者が“やむなく”公共交通機関を使うのも無理はない。

 3月13日に成立した新型インフルエンザ等対策特別措置法では、政府の権限を狭めるために緊急事態宣言の場合は国会への事前報告が付帯決議に盛り込まれるなど、野党とマスコミの反対で“骨抜き”になったのは周知の通りだ。

 つまり、日本では性善説に基づいて、それぞれの良心に訴えるのが基本であり、なおかつ移動手段も自己責任という実に“無責任”なものなのだ。

 今年6月末、私はコロナの謎と中国の隠蔽の実態、日本のお粗末な対策の有様を告発した『疫病2020』(産経新聞出版)を上梓した。発売1か月で8万部を突破し、多くの読者が情けない日本の有様に危機感と怒りを共有してくれている。

 この作品の中で、「国民の命を守る」という使命に向かって突き進む台湾と、そんな使命など忘れ果てた日本の官僚の姿を詳述させてもらった。何が違っているから、これほどの「差」が生じたのか。そのことを理解してもらうためだ。

 日本が踏み出した在留資格のある外国人の条件つき入国許可──これは、今後、なし崩し的に進む「入国緩和」のさきがけとなるだろう。すでに5月1日から中国と韓国の間では、出国・入国の際のPCR検査を条件に、世界に先んじて互いの出入国を許可し合っている。

 それを見た日本の経済界は、「早く日本も参加を」と政府に要請を続けていた。言葉を代えれば「早く中国市場に行かせろ」ということである。これほどの痛い目に遭っても第1波の教訓が生かされていないということだろう。

 日本が在留資格のある外国人の入国を認めた8月5日、台湾は逆にビジネス客受け入れ対象国から「日本を除外する」ことを決定した。連日1000人を超える新規感染者が出ている日本を新型コロナの“レッドゾーン”と見なしたのだ。さすが台湾は厳格である。

“GO TO トラベル”でも、一貫した指針と方策がなく、右往左往した安倍政権。厳格さとは無縁のまま始まった外国人入国によって、日本経済はさらに打撃を受けることになるのだろうか。見事な手本となった台湾がこの上なく日本を心配し、「日本はこのままで大丈夫だろうか」と政府関係者も筆者に伝えてきている事実を申し添えておきたい。

作家・ジャーナリストの門田隆将氏

【プロフィール】門田隆将(作家・ジャーナリスト)かどた・りゅうしょう/1958年、高知県生まれ。『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。近著に『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫)、『新聞という病』『疾病2020』(産経新聞出版)など。

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