セオリーを無視して成功(YouTubeより)

 山中でひとりキャンプする様子を淡々と収めた動画は徐々に注目されるようになっていった。アカウント開設から3年後の2018年にはチャンネル登録者数20万人を突破。巷のキャンプ・ブームも追い風となり、アウトドア雑誌やキャンプ関連のイベントにも出演するなど、YouTubeをきっかけにソロキャンパー芸人としてのキャリアを確立していくことになったのである。

 YouTubeのチャンネル登録者数は、2020年8月現在で85万人超と大幅に増加している。そんなヒロシの躍進について、お笑い評論家のラリー遠田氏は「ヒロシさんがYouTubeで成功した理由は、ぶれずに自分が好きなことだけをやり続けていたからでしょう」と解説する。

「今のYouTubeの世界では、言葉の隙間を極限まで削って短いカットでつないだり、話す内容をすべてテロップにしたりして、派手でスピード感があってテンポがいい映像を作るというのがセオリーになっています。でも、ヒロシさんがYouTubeで公開している動画は、そのようなセオリーに一切とらわれていません。映像も内容もシンプルで、ヒロシさんが純粋にキャンプを楽しんでいるところを映しています」(ラリー遠田氏)

 純粋に好きなことを追求しようとするヒロシの姿勢が、結果的に既存のYouTuberとは異なる魅力的な動画を生み出すことになったのである。さらにラリー遠田氏は次のように続ける。

「動画を見ていると、ヒロシさんがキャンプ好きであることが伝わってくるし、キャンプの雰囲気そのものをリアルに感じられます。見る人に無理に媚びたりせずに、自分が好きなことにこだわったことが成功の理由だと思います」

“好きこそ物の上手なれ”という諺があるが、好きなことだからこそ撮影や編集のスキルが向上し、クオリティの高い動画を視聴者に届けることができたのかもしれない。そうした彼が執筆した初のキャンプ本には、道具選びや焚き火のやり方など、キャンプを楽しむためにこだわり抜いた“ヒロシ流メソッド”が詰め込まれている。多くのファンが注目するのも頷けるのではないだろうか。

●取材・文/細田成嗣(HEW)

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