『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)などの著書があるジャーナリストの出井康博氏も、同作について〈留学生や実習生の実態に加え、日本語学校で働く若者の葛藤や苦しさが実によく描かれています。犯人に『外国人は日本に来るな!』と叫ばせた最後の場面はとりわけよかった。映像の力は凄い。志と勇気ある製作者に拍手を送ります〉(7月28日のツイートより)と絶賛している。
日本の歪な構造が見えてくる
野木亜紀子は、映画学校を卒業後、ドキュメンタリー制作会社に就職したという経歴を持っている。社会問題への関心の深さは、もしかすると取材の日々の中で培われたものなのかもしれない。
ドラマに詳しいライターの西森路代氏は、野木作品の魅力をこのように分析する。
「野木亜紀子さんは、たくさんの人に向けたわかりやすい部分と、社会的テーマに取り組んだ複雑な部分を同時に書くことができるクリエイターです。それによって幅広い層の視聴者が、それぞれに面白さを見いだせるのが作品の魅力ではないでしょうか。
例えば『逃げ恥』であれば、“ムズキュン”な恋模様を描く一方で、家庭内にある性別役割分業について考えさせたり、女性を抑圧する“呪い”の存在を明らかにしたりと、社会的な問題も自然に盛り込んでいました。
『アンナチュラル』も、一話完結の法医学ミステリーとして楽しめると同時に、その中で“法を守るとはどういうことか?”や“社会の中に女性蔑視がナチュラルに潜んでいるのではないか?”ということも描かれていました」