国内

五輪強行開催で恥をさらせば、日本は世界から軽んじられる

憲法学者で慶應義塾大学名誉教授の小林節氏(時事通信フォト)

 人によって言うことが大きく異なり、「アスリートファースト」どころではない東京五輪の2021年夏の開催問題。予定通り開催か? 中止か? さらに延期か? 憲法学者で慶應義塾大学名誉教授の小林節氏(71)は次のように考える。

 * * *
 コロナ禍という有事に安倍政権がやったことといえば、費用対効果が疑問視されるアベノマスクや、業者の選定基準が不透明だった持続化給付金事業などが挙げられます。国民のためよりも身内の利益をはかり、与党は「今だけ、自分だけ、お金だけ」しか考えていない。危機管理能力のなさが露呈しており、コロナの危機的状況を乗り越えて五輪を開催する政治的力量などないことは明白です。

 政治家の使命は、主権者である国民を幸福にすること。そして国民が幸福を感じる条件は「自由、豊かさ、平和」の3点セットです。しかし現在、感染拡大でその全てが奪われている。憲法で保障された財産権の補償の規定を無視した自粛要請を、五輪のためにこれ以上行なうべきではない。

 仮に日本が感染を抑えたとしても、パンデミックとは地球規模で、時差を伴って波状的に起こるものです。このグローバル化された時代に、1年延期で大した準備もできないまま開催しても、五輪どころではない国も多いでしょう。

 強行開催すれば、会場や選手村でもクラスターが発生し、運営スタッフも不足して五輪が破綻します。それでも開催を既定路線とするのは、科学的で冷静な視点を欠き、政治的功名心を優先した判断と言わざるを得ません。日本は戦後復興で世界から優等生とみられましたが、強行開催で恥をさらせば、日本が世界から軽んじられるターニングポイントになってしまうかもしれません。

【PROFILE】こばやし・せつ/弁護士、慶應義塾大学名誉教授(憲法学)。改憲論者の立場から安倍政権の改憲案を批判している。

※週刊ポスト2020年8月28日号

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン