私の悪友だった立川左談次の最後をキチンと書いといてくれたのが漫才コンビの「米粒写経」であり、早大などの非常勤講師もつとめる日本初の“学者芸人”サンキュータツオ。“記憶を語り継ぐことだけが、師匠たちを死なせない唯一の方法だ”と永六輔のようなことを考えて、様々な別れをつづってくれた『これやこの』(角川書店)。小さな毒を含んだ左談次のニヤリと笑う顔が浮かんだ。若い頃は、酔うとタチが悪いので私と左談次は“まむしの兄弟”と言われ若手から恐れられた。こうして演芸的にも若い書き手が増えてきているのでたのもしく思う。
内側にいたからこそ書けて読む方はワクワクするのが『吉本興業史』竹中功(角川新書)。『マンスリーよしもと』の初代編集長だったり「よしもとNSC」開校に携わった男だ。曰く「芸人は商品だ。よく磨いて高く売れ!」ブラック企業と指弾されたウラ側。
当誌の連載陣では春日太一『日本の戦争映画』(文春新書)。この男の本はほぼ間違いないネ。三割打者の安定感。「昭和歌謡といつまでも」を連載している堀井六郎は小さな出版社も別名でやっていて、今回はビートルズに精通している現役の名医が『ビートルズの食卓』松生恒夫(グスコー出版)。
漫画も全5巻読んで『極主夫道』(新潮社)。ヤクザが専業主夫になる衝撃。10月には玉木宏でTVドラマ化!
■イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2020年8月28日号