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戦没オリンピアンの悲劇 ベルリン五輪出場後、陸軍で先陣も

多くのアスリートが失意のまま戦地に赴いた

 今夏開催予定の東京オリンピックは延期となり、1年後の開催も危ぶまれている。奇しくも80年前の1940年にも、戦争という悲劇で中止に追い込まれた「幻の東京オリンピック」が存在した。

 1928年のアムステルダム大会、1932年のロサンゼルス大会、1936年のベルリン大会などに出場し、続く自国開催大会でも活躍が期待されたにもかかわらず、夢を絶たれたオリンピアンは少なくなかった。そのなかには戦争で還らぬ人となった悲劇のアスリート、「戦没オリンピアン」が多数いたことが広島市立大・曾根幹子教授、卜部匡司教授の研究により判明した。

『幻のオリンピック 戦争とアスリートの知られざる闘い』(NHKスペシャル取材班著・小学館刊)には、その幻のオリンピックにかけた人々の人生が綴られている。

 陸上100mの有力選手だった鈴木聞多はベルリン五輪の前哨戦で欧州王者を破って優勝するも、五輪本番では失速。東京大会で雪辱を果たそうとしていたが、日中戦争の高まりで陸軍に入隊を志願した。鈴木はその俊足を買われ攻撃では常に先陣を切らされたという。1939年に戦死した後も陸軍大臣が賛辞を贈りオリンピアンの名声は戦意高揚のプロパガンダとして利用された。

 1936年のベルリン大会のサッカー、優勝候補だったスウェーデン戦で奇跡の逆転ゴールを決めた松永行(あきら)は翌1937年、日中戦争開戦の年に陸軍に入隊し大陸へ渡った。前掲書によれば、「『戦争に行きたくない。もう一度ヨーロッパに行ってサッカーの勉強がしたい』と言っていた」と遺族の間には伝えられているという。サッカーへの未練を抱えたまま松永はガダルカナル島に上陸した2か月後、1943年1月に戦死した。

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