大正末期の『ひろしま広報』に「片山写真館夕涼み」と題して掲載された写真をカラー化

カラー化する前のモノクロ写真(提供/片山曻)

 カラー化写真を目にすることで、それまで被爆者の記憶の中で止まっていた“時”が再び動き始める。庭田さんはそうした瞬間に幾度も立ち会ってきた。

 モノクロ写真には現代と引き離された「過去」としての印象が強いが、同じ写真が色彩を帯びることで命を吹き返し、写る人々の息遣いやその場の温度までもが感じられる。だからこそ戦争が現代と地続きに感じられて、今を生きる私たちにも自分ごととして想像しやすくなる。

 戦争体験者の想いや記憶の新しい伝え方として、このプロジェクトは「記憶の解凍」と名付けられた。これまでカラー化された写真は展覧会やスマートフォンアプリ、国際会議やメディアなどを通して多方面に発信され、『AIとカラー化した写真でよみがえる 戦前・戦争』(光文社新書)として先月書籍化もされた。

「私たちの平和な日常が疫病によって突然奪われてしまった今の状況と重ね合わせることで、戦争は遠い過去のできごとではなく、私たちの生活にも十分起こりうるものだと実感できるのではないかと思います。私たちひとりひとりが原爆や戦争、平和について考え、感じたことが共感となって社会へ拡がり、未来に受け継がれていくことが願いです」

その橋渡しとして「記憶の解凍」プロジェクトが貢献できたらという想いで活動している、と庭田さんは語った。

1932年ごろ。中島本町にあった生家の「高橋写真館」で撮影された、家族と親戚の夏の団らん(提供/高橋久)

1945年9月8日、原爆投下1か月後。広島の焼け跡を傘を差して歩くカップル(「LIFE」誌のカメラマン、Bernard Hoffmanが撮影)

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