「250セーブを達成して名球会に入ることに価値を見出すかどうか。それは本人が決めることで、他人がやるべきだとか、やっちゃいけないとか言うことじゃないですよね。だから球児が達成したいと言うなら挑戦させればいい。最後まで優勝争いをしているなら別ですが、消化試合なら希望に沿ってやればいい。これまでにも打率や打点など、記録のための試合をたくさん見てきましたが、シーズン終盤は個人記録のために試合をやっているようなもんですからね。

 高知商の先輩としては、球児は記録にこだわりはないと思いますよ。高知商出身者に細かいことにこだわるヤツはいないはずです(笑い)。ただ、もう体にガタがきて、投げられないから引退を発表したのかと思ったら、まだ2か月で戻ってきたいと言うからね。それならシーズンが終わってから発表すればよかった。ボクなら引退と言った時点ですぐに辞めてますから、そこは同じ高知商OBでも考え方が違うところですね」

 江本氏は記録を気にせず34歳の若さで引退したことで知られるが、大記録の達成者にも話を聞いた。通算350勝の名球会メンバーで、阪神で投手コーチも務めた米田哲也氏(82)はこう語る。

「実は、ボクも最後の1勝は監督にお膳立てしてもらいました。現役時代の最後の1年は近鉄で過ごしたのですが、痛風を発症して休んでいたので、349勝で終わりだと半ば諦めていた。ところが、シーズン最終戦前日に西本幸雄監督から連絡があって、痛み止めの注射を打って球場へ向かったんです。

 試合はチームメイトの平野光泰が逆転3ランを打った直後、先発が勝利権限のない状態で降板し、ボクは4回から1イニングと3分の1を投げた。残りは毎イニング先発級の投手に代えることでボクを勝ち投手にしてくれた。相手は古巣の阪急で、試合後に両軍から胴上げをしてもらったのが嬉しかった。

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