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2020.09.17 07:00  マネーポストWEB

銀行員による企業再建 伊勢丹は創業家社長退任の荒療治も

伊勢丹救済のために銀行はどう介入したか(共同通信社)

 瀕死の企業をバンカーが立て直す──過去を遡ると、そんな『半沢直樹』(TBS系)のようなケースが、実際にあったのだ。

 総会屋に対する利益供与や有価証券報告書の虚偽記載などの事件を起こし、2004年に上場廃止となった西武鉄道。西武グループはメインバンクであるみずほグループの管理下に置かれ、2005年に社長として立て直しに入ったのは、みずほコーポレート銀行副頭取だった後藤高志氏だ。

 持ち株会社の西武HDを設立し、企業再編するなかで出資者として協力したのが外資ファンドのサーベラスで、再生資金として1000億円を出資し、筆頭株主となった。

「本来なら、みずほが再建のための資金を用意するが、当時は不良債権の処理問題が残っていて、融資には金融庁から厳しい指導を受けていたので金は出せなかった。そこでサーベラスに頼ったということです。

 サーベラスからは不採算路線の廃止や西武ライオンズの売却などの要求があった。後藤社長がそれをはねつけた際には緊張感が高まり、2013年にはサーベラスが敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けてきて対立。

 しかし、みずほは西武側に賛同し、取締役会はみずほの方針に従って判断した。西武の立て直しは、主導権を握るみずほ銀行の力を背景に、サーベラスの要求を押しとどめていた構図です」(西武関係者)

 そうして2014年には西武HDは再上場を果たしている。その後、サーベラスとは資本業務提携を解消した。

 救済のために銀行員を送り込むのではなく、銀行主導で合併させる手法が用いられたこともある。東京商工リサーチ常務情報本部長の友田信男氏は、商社の双日を挙げる。

「バブル崩壊で多額の不良債権を抱えていた中堅商社の日商岩井とニチメンは、UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)の仲介で経営統合による生き延び策を選び、2005年に合併しました。両社ともそれぞれ独立した取引先に過ぎなかったが、“銀行系列”という概念が残っていた最後の時期ではないでしょうか」

 銀行が救済で介入するのは、必ずしも経営危機のケースだけではない。伊勢丹の場合は、会社を守るために創業家社長を退任させるという“荒療治”が行なわれた。金融ジャーナリストの小泉深氏が語る。

「1984年に38歳で社長に就任した伊勢丹の創業家4代目の小菅国安氏は、『今ある伊勢丹のすべてを否定する』という方針を打ち出し、メインバンクの三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に反発。三和銀行(現・三菱UFJ銀行)との取引を広げるようにした。2つの銀行を競わせることで主導権を握ろうとしたが、三菱銀行は不快感を示し、関係は悪化します」

 その渦中に不動産会社の秀和が伊勢丹株を買い占め、1993年には株式28%を保有する筆頭株主になったが、資金繰りの悪化で伊勢丹株をイトーヨーカ堂に転売しようとしたことが発覚。伊勢丹が買収されかねない事態になった。

「秀和の保有株を引き受けるには2000億円近い資金が必要で、そうなると三菱銀行の協力を仰がねばならないが、小菅社長と三菱銀行の関係は度重なる衝突でこじれている。そうした状態に伊勢丹内部も業を煮やし、1993年5月、クーデターのような形で小菅社長が退任。その人事に合わせ、三菱銀行専務で証券業務のプロだった城森倫雄氏を伊勢丹副社長に迎え入れた」(同前)

 伊勢丹が歩み寄ったことで、三菱銀行も協力し、同年12月に秀和の伊勢丹株を買い戻し、一連の問題は決着した。

※週刊ポスト2020年9月18・25日号

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