国内

台風10号の警戒と避難呼びかけ 「煽りすぎ」の指摘は妥当か

台風10号により外壁が吹き飛ばされたタクシー会社の事務所(時事通信フォト)

台風10号により外壁が吹き飛ばされたタクシー会社の事務所(時事通信フォト)

 絵本やアニメ、人形劇などでおなじみのヨーロッパの昔話『三匹の子豚』は、子豚の三兄弟がそれぞれ藁(わら)、木の枝、レンガで家を作る。レンガは重くて家を建てるのに時間がかかるため他の兄弟から笑われるのだが、恐ろしい狼がやってきても無事だったのは、レンガの家だけだった。全国で死者・行方不明者5000人超を記録した1959年の伊勢湾台風並みと言われた2020年の台風10号を前に、気象庁は早くから警戒を呼びかけ、進路にあたる九州の人たちは、レンガの家を建てた子豚のような準備をして備えた。災害が多発する世紀であるにも関わらず、ネットでは子豚のレンガの家を嘲笑うかのような発言が少なくない現実についてライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 経験したことのないような威力、とまで言われた「台風10号」。9月7日時点で、九州中国四国の859万人に避難指示や避難勧告が出され、九州山口では実に20万人が実際に避難した。民放キー局の気象担当記者が振り返る。

「近年、天候が荒れることは珍しくなくなってきましたが、今回の台風は本当にまずいという空気が、気象庁内にありました。私たちも報じられる3~4日前から、台風に備えてどう報じるか、検討を進めていたのです」(気象庁担当記者)

 台風10号に関する報道で「マスコミは煽りすぎ」という意見が、ネット上にも目立っていた。台風一過、想定されたような被害が出ていないことが確認されると、そういった意見はより多く見られるようになった。北部九州在住の筆者の友人(30代)は、こうしたマスコミの報道を見て、避難所になっている近くの公民館を訪れた。

「避難所が一つしかないため、すでに避難民で満杯。お年寄りも多く、コロナ感染の心配もある。マスコミが必要以上に煽るからみんなが避難してくるって、地区長も苦笑いをしていたほど。パニックになって喧嘩とかのトラブルもあったようだ」(筆者の友人)

 気象庁担当記者、そしてマスコミの意図が、多少曲がってはいるものの、しっかり視聴者伝わっていた、ともいえよう。友人が続ける。

「避難していた人に聞いたら、庭にある飛んでいきそうなものを仕舞ったり、屋根にブルーシートをかけてきた、という人もいて、避難だけでなく事前準備をしっかり行なっていた。実際自宅にいると、かつてないほど風が吹き、家全体が揺れ続けた。北部九州の人間で、大したことなかったじゃないか、というように思う住民はいないよ」

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン