ドラマをより能動的に楽しむために
制作サイドにしてみれば、視聴者によるネット大喜利は大歓迎。「どんどんやってほしい」と思っていますし、むしろ「ネット大喜利が発生するシーンをどう作るか」を考えています。
ネット大喜利が盛り上がる最大のメリットは、視聴者のリアルタイム視聴を促進するから。放送後の録画視聴やネット視聴ではなく、リアルタイムで見てもらい視聴率の獲得につなげたいのです。
基本的にネット大喜利は瞬発力勝負であり、熟考するのではなく、思いついたらどんどん書き込んでいくもの。「これはお題だ」と感じた瞬間からスタートし、多くの人々が呼応することで盛り上がりますが、いつ次のお題に変わるかわからないため、リアルタイムで見ることが大前提となります。
好きなものを好きなときに見られるオンデマンドが普及して便利になった一方で、「今でなければダメ」というライブ感のあるコンテンツは希少価値が高くなりました。ネット大喜利の存在が全話世帯視聴率20%超の脅威的な数字に貢献しているのは間違いないでしょう。
もともとドラマは、「スタッフとキャストが作ったものを見る」という視聴者が受け身になりやすいタイプのコンテンツ。しかし、ネット大喜利をしながら『半沢直樹』を見ている人々は「自ら参加する」という感覚で、より能動的にドラマを楽しんでいます。能動的な視聴の例としては、映画『天空の城ラピュタ』の「バルス」が有名ですが、頭を使って考え、楽しく競い合うネット大喜利は、より進化した楽しみ方と言えるのではないでしょうか。
録画やネットでの視聴が普及した今、世帯視聴率15%以上を獲得する作品は、年数本程度になりました。これまで通りの受動的な姿勢で見る人々だけでなく、「自ら発信して楽しみたい」という能動的な姿勢の人々を取り込まなければ、『半沢直樹』のようなヒット作になることは難しいのです。
また、多くの人々がネット大喜利に参加することで、ツイッターのトレンドワードにランクインし、出演者が反応することでメディアが記事化するなど、反響は広がる一方。今後もネット大喜利が盛り上がるような脚本・演出を仕掛けるドラマは間違いなく増えるはずですし、新たなドラマの楽しみ方として定着していくでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。