トランプ氏は鷹の目で反撃の機会を狙っている(AFP=時事)

 タウンホール・ミーティングはテレビ討論会の前哨戦のような意味を持つし、市民からの質問にどう答えるかは候補者の能力が試される。今回のバイデン氏のそれは、正直に言って焦点のないぼんやりしたものだった。CNNの仕切りも悪かったのか、質問に立ったのは民主党支持者ばかりで、厳しい質問や追及はひとつもなかった。こんな形式ではトランプ氏とのテレビ討論の予行演習には到底ならないし、トランプ政権の問題点を浮かび上がらせることもできなかった。

 これも過去の例を見れば、民主党の大統領候補でも、クリントン氏、ゴア氏、オバマ氏などは、みな下っ腹に力の入った強者の顔をしていた。強い自我と有権者を動かす説得力を持っていた。その言論には研ぎ澄ました刀のような鋭さがあり、同時に聞くものを熱狂させる包容力も見せた。それに比べて今回のバイデン氏には、トランプ氏への強い対抗意識も、戦いに向かう闘志も感じられなかった。

 トランプ氏はこの集会をどう見ただろうか。バイデン氏の攻撃力がこの程度だとわかったのだから、反撃の機会を狙って鷹のような目で隙をうかがっているはずだ。トランプ氏の攻撃力の高さはいまさら言うまでもないだろう。3回のテレビ討論会では、司会者の役割も重要になるが、今回は全体を通してトランプ氏に有利な人選になっている。少なくとも、討論会に向けて布石に余念がないのはトランプ氏のほうである。これから二人にはスピーチコーチがつき、仮想敵を相手に多くのトレーニングが積まれるはずだ。どんな表情、態度をとるのか、その場面では笑うのか笑わないのか、など入念にリハーサルが繰り返されるはずである。

 筆者の指摘以前に、民主党の重鎮たちもバイデン陣営の戦略家たちも、優位に立ったら一気呵成に攻めるのが常道であるとわかっているはずだ。それができないということは、やはり体力的に不安を抱えている可能性もある。情勢は引き続きトランプ氏が不利だが、9月29日に形勢逆転が起きる可能性はまだ残っている。

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