ライフ

85才認知症の母 俳句で詠んだ思い出は心に深く刻まれる

当時4才の娘が母にプレゼントしたハートの葉っぱ

 認知症の母(85才)を支える立場である『女性セブン』のN記者(56才)が、介護の日々の裏側を綴る。今回は、俳句にまつわるエピソードだ。

 * * *
 要介護になる前の母は俳句が趣味で、身近なことを詠んでは句会にもよく参加していた。題材になった出来事はきっと心に深く刻まれるのだろう。いまも懐かしい句を見れば、そのときの気持ちまでが鮮やかによみがえるようだ。

“はーと形”に込めた最上級の贈り物の意味

 母の部屋に大事に飾ってある古ぼけた額縁。中には縦横15cmほどのハート形の葉っぱと俳句が一句。17年も前に、当時4才だった孫(私の娘)と母との、ささやかだが忘れられない思い出が詰まった特別な額縁だ。

 娘が3〜4才といえば、私は子育てに奮闘しつつ、仕事にもアクセルを踏み込んだ時期。預け先も保育園と実家の2か所態勢で奔走していて、娘のたどたどしいおしゃべりに耳を傾ける余裕もなかった頃だ。ちょうど11月の母の誕生日に娘を預けたとき、散歩の道いっぱいに落ちている色とりどりの葉の中から、娘が1枚選んでプレゼントしてくれたと、母は大変喜んでいた。

「孫からは何をもらってもうれしいんだな……」と、ボロボロで薄汚れた落葉を丁寧に額に収めた母を少々あきれ顔で見ていたが、母はこのエピソードを俳句に詠み、句会で披露して師や仲間からおおいに絶賛されたのだ。

「Sちゃん(孫)の保育園ではね、ハートが流行っているんだって。“いちばん好き”という意味だって。おばあちゃんが誕生日だから“ハートをあげる”ってくれたのよ」

 母からそう聞かされたのは少し後のこと。母の心をとらえたのは“ハートをあげる”という言葉だったのだ。

 かわいい保育園児が発したから“はーと”の表記にしたという、心憎いひねり技が秘められていることにも恐れ入ったが、落葉ひとつで絆を深めている祖母と孫の関係に、小さな嫉妬を感じたのも正直なところだった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
日本テレビの杉野真実アナウンサー(本人のインスタグラムより)
【凄いリップサービス】森喜朗元総理が日テレ人気女子アナの結婚披露宴で大放言「ずいぶん政治家も紹介した」
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン