こうした商売は、需要と供給のバランスが、ある一定の枠組みから出ない中で動いている限りは成り立つ。また、供給が極端に少なくなったり、過度な需要が発生すれば、いわゆる「転売ヤー」といった卑怯な連中がゾロゾロと姿を見せ始める。ただし「需要がゼロになる」という事態は、想定されてこなかったのである。
千葉県某市内の質店店長・佐々岡章仁さん(50代・仮名)も、増え続ける店の在庫を前に森本さんと同様の懸念を表明するものの、もっと達観的な見方だ。
「コロナ禍で、人は『本質』を好むようになったと思います。もっと言えば『無駄』を嫌うようになったとも。特にブランド品、高級時計など、生活に必要か?持っていれば幸せになれるか?と考える人が増えた気もします」(佐々岡さん) 例えば佐々岡さんの店には、今も若い女性客などがひっきりなしに訪れるが、話をしているうちに買う気が失せてしまう客が増えたような気がしている。そんな時、客が「本質」について考えているのではないかと思うのだという。
「外出する機会もないから所持しているブランド品を売りに来た、という人たちも大勢いらっしゃいます。お金には困っていないが、いざという時のためにブランド品を現金化しに訪れる方もいます。買取価格は下がる一方で、販売価格も次第に下げて行かないとパンクするでしょうし」(佐々岡さん)
「後には必ず好景気が来る」という一般的な経済の見通しとは、違っているかもしれない疑いが強いコロナ禍の不景気。人々の意識や価値観が変わったことで、社会に必要とされなくなってしまった職業、価値が見出されなくなった職業の淘汰が始まろうとしているのか。