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2020.10.06 18:03  BOOK STAND

第88回 マーベル・シネマティック・ユニバースはマーベル・シネマティック・ダイバーシティへ

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の期待作の1つ『ミズ・マーベル』の主役であるカマラ・カーン役に新人のイマン・ヴェラニ(Iman Vellani)が抜擢されました。

この作品はディズニープラスで2022年に配信が予定されています。MCUは今後、劇場用映画とディズニープラスの配信ドラマの両方をリンクさせながらその世界を広げていく戦略をとります。
ミズ・マーベルはいろいろな意味でこれからのMCUを支えていくヒーローの一人。まずドラマでデビューし映画の方にも登場していくでしょう。

原作のマーベル・コミックにおいてこのキャラが注目された理由は、彼女がアメコミ史上初のムスリム(イスラム教)のヒーローだったということです。
パキスタン系アメリカ人でイスラム教徒のカマラはある事件がきっかけでスーパーパワーを覚醒させます。それは自身の手足をゴムのように変形させ巨大な拳を作って相手をぶちのめしたり、大きくした手の平をグーンと押し出し突き飛ばし攻撃をすることができるようになります。元々ヒーロー・オタクだった彼女は憧れの女性ヒーロー、キャプテン・マーベルがかつて名乗っていたミズ・マーベルというヒーロー名を譲りうけ、この名で活躍するようになります。

マーベルとしてはこのキャラに力をいれているようで、スクウェア・エニックスから最近発売されたゲーム『Marvel’s Avengers (アベンジャーズ)』でも彼女が事実上の主役なのです。
やはりイスラム教徒のヒーローというところがポイントです。演じるイマン・ヴェラニもカナダの女優ですが、パキスタンからの移民だそうです。また10代の少女というのもポイント。
アイアンマンとかドクター・ストレンジとかおじさま系ヒーローがひっぱってきたMCUですが、今後はこうしたティーン・ヒーロー(一応スパイダーマンもそうです)も重要な役割を担うわけですね。

一方、来年劇場公開されるMCU映画『シャン・チー・アンド・ザ・レジェンド・オブ・ザ・テン・リングス(原題)』の主人公シャン・チーはアジア系のヒーロー。元々70年代にブルース・リーの『燃えよ!ドラゴン』が世界的にヒットしてカンフー・ブームがまきおこった時に、そのトレンドをとりいれて生まれたヒーローです。
主人公のシャン・チーを演じるのは中国系カナダ人のシム・リウです。アメコミというのはアメリカン・コミックスですから、やはりヒーローのほとんどは”白人の、大人の男性”でした。しかしミズ・マーベルにしろシャン・チーにしろ、イスラム系、アジア系のヒーローであり、MCUのダイバーシティ(多様性)戦略が見えてきます。

この背景にあるのはやはり2018年の『ブラックパンサー』の大ヒットです。実はあの作品はMCUの中で『アベンジャーズ/エンドゲーム』の次に当たった作品であり、アメリカ興行史上歴代4位、しかもアカデミー作品賞にノミネートされた大成功作なのです。
その興行的成功の要因は、やはり黒人観客層の動員が大きかったと言われています。『シャン・チー・』がアジア系アメリカ人、『ミズ・マーベル』がアメリカのイスラム教徒たちを動かすことは想像できます。
ただMCUがこうした商売っ気から、これらのヒーローを作ったというわけではありません。マーベルは早くからコミックの中に黒人や女性、十代の若者、ハンディ・キャップを持った人たちが超人・ヒーローになるというコミックを展開してきました。ダイバーシティという言葉が広く流通する前からです。
“どんな人でもヒーローになれる”というのがマーベルのポリシーの一つでもあるからそれは当たり前のことかもしれない。逆に、昨今の多様性を求める風潮の方がマーベルに追いついたのでしょう。そうマーベル・シネマティック・ユニバースはこれからますますマーベル・シネマティック・ダイバーシティに向かっていくのでしょう。

*先にも書きましたが、こうした路線への弾みがついたのはやはり『ブラックパンサー』のおかげです。その立役者でもあるチャドウィック・ボーズマンさん(ブラックパンサーことティ・チャラ役)がこの夏逝去されました。突然のことでした。スクリーンで見せる彼の優しい眼差しが忘れられません。改めてご冥福をお祈りいたします。チャドウィック・ボーズマン・フォーエヴァー

(文/杉山すぴ豊)

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