外国人が適当にごみを出すと、日本人も適当になった
家賃の安いアパートやマンションは外国人留学生や労働者にとっても借りやすい物件だ。そういう物件は相手を選んでいられないので、定番の「外国人お断り」も少ない。
「もう半分以上が外国人かな、ほとんどが中国の人で、東南アジアの人もいるけど、まあ中国人ばっかりだ」
確かに、ゴミ集積所の案内も英語と中国語だ。自治体で配布しているものの他、一部中国人住民が手を入れたであろう中国語で書かれた手書きの張り紙もある。日本在住の中国人は81万人(令和元年12月末時点・法務省)と山梨県や福井県の人口と同じくらい。これは冗談だが、みんなで大移動すれば鳥取県(約55万人)くらいは支配できるかもしれない。もっとも、中国人どうこうより少子化と転出による地方の壊滅的疲弊のほうが問題かもしれないが ──。
「あの人らはたくましいよね、エレベーターが壊れても階段で全然平気だし、あんな狭い部屋に大人数で住んでるもんね。昔は日本人の大家族とかこのマンションにもいたけどさ、子どもじゃなくて大人が何人もすし詰めだもんな、なんかどんどん増えてる」
各戸の所有者が好き勝手に貸しているので規約も何もない状態である。同行の不動産屋も仲介手数料さえ入ればいいし、外国人に貸せる物件は限られているから仕方ないと言う。
「ゴミ出しとか教えるとそれなりに従ってくれるし協力する気はあるみたい。でも文化の違いなのか俺の教え方が悪いのか、めちゃくちゃだね。まあ日本のゴミ出しは難しいって俺も思うけど」
ゴミ出しは確かに難しいだろう。可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみに資源ごみ、地域にもよるが資源ごみもビン、カン、ペットボトル、古紙と分かれる。剪定枝や革製品、小型家電などもっと細かい区分の自治体もある。
「それが困るのはさ、中国人だけじゃなくて、他の住人までいい加減になっちゃったんだよ。前はそうでもなかったんだけど、外国人が適当に出すから日本人も適当に出すようになっちゃったんだ。だから集積所は荒れ放題さ」
なるほどその考えはなかった。生で話を聞くと思ってもいない方向の話が出てきて面白い。中国人がめちゃくちゃ出すことを非難するより、中国人=このマンションで言うところの「みんな」が適当なら日本人も適当でいいやになったということか。古いネタだが「赤信号みんなで渡れば怖くない」は社会の同調圧力と群集心理を表現した秀逸な皮肉だと思う。
「ただ怖いって思うことはあるよ。やっぱ集団で住むし、何してるかわかんないし。こういうの言っちゃいけないんだろうけど、とにかくうるさいし。うるさいって日本人のうるささじゃないからね、朝から晩までわめいてる」