議論は『半沢直樹』の男性社会の描き方についても及んだ
村木:なるほど、言われてみるとそうですね。片岡愛之助さんの演じられたオネエキャラな人物が男性の急所をつかんだりというのは問題だと思いましたが。私は、いわゆる役員クラスのLGBT研修で、いろんな会社に行かせていただくんです。今月出させていただいた『虹色チェンジメーカー』という書籍でも様々な企業のLGBT施策を紹介しているんですが、ダークスーツでしかめっ面の人が多い会社もあれば、最近は、役員会でも男女半々だったり、服装もカラフルだったり、笑顔がちゃんと見えるところもあって。やっぱり笑顔が多い職場のほうがクリエイティブというか、より良い仕事ができるんじゃないかなっていう気はします。
治部:そういう楽しそうな役員会の会社のほうが、やっぱり、ジェンダーやLGBTへの意識も高いと思いますか?
村木:そうですね。やはり多様性が当たり前になっている社内風土だと感じます。でも、ダークスーツのしかめっ面をしている方も、個人的にお話しすると、やわらかい方だったりもして。
治部:一人ひとりは柔軟なんだけど、組織になると……ということはよくありますよね。
村木:昨年、関西のテレビ局のある番組で、トランスジェンダーの方を追い回して性別をしつこく聞いたり、胸を触ったりするというひどく差別的なシーンがあって、大問題になりました。その後、その局に研修に行かせていただいたんですが、そうしたら、若手の制作スタッフはLGBTも身近で、多分、本当は思うところがあったのでは、と感じました。男性であるプロデューサーの顔色をうかがって何も言えなかったのかなと。クリエイティブの現場でも、自分が思っていることを言えないという風通しの悪さ。これはダイバーシティとも非常に関係があると思います。
治部:コメンテーターの方がその場でビシッと「人権問題だ」と諌めて、でも女性のアナウンサーたちは何も言えなかったっていうあの番組ですね。そこにもパワーバランスの問題があると感じます。コメンテーターの方は上のポジションだから言えた、という。そういうことは多々あります。私も、CMのジェンダーの描かれ方で炎上した事案に関して、研修をさせていただいたことがあったんですが、その会社では創業者への忖度があって社内で議論ができていなかった。気づいている人たちの意見が適切に取り込まれていないということがやはり問題なんです。ダイバーシティマネジメントの大切さ、ですね。