アメリカの失業はますます深刻に(EPA=時事)

 当然である。大統領選挙に出馬しているのは父親のジョー・バイデン氏なのだから、スキャンダルを持ち出すにしても、本人の話でなければ意味はない。息子の話で印象操作して有権者をひっかけようというのは虫が良すぎたのである。バイデン氏本人に対しても、これまでの政治キャリアでの失敗を挙げて何度も攻撃を仕掛けたが、そこは老獪なバイデン氏がのらりくらりと逃げて、ついに捕まらなかった。印象操作を仕掛けるトランプ氏と、具体的には答えずに逃げるバイデン氏、という構図で、およそ討論にはならなかった。

 アメリカ国民が一番聞きたかったのは、もちろんコロナ対策である。しかし、そこでも両者は中身のない非難合戦に終始した。バイデン氏は全国民にマスク着用を促したうえで、公共の場でもマスクを着けないトランプ氏を批判し、感染拡大は対策をとらなかったトランプ氏に責任があると強調した。それに対してトランプ氏は、フロリダ州やテキサス州では感染拡大が減速しているとして、「転換点を迎えつつある」と述べた。さらに、感染拡大は「中国のせいだ」と責任転嫁した。どうも両者ともにコロナ対策の本質がわかっていないのか、有効な政策がないから本質に触れたくないのか、どちらかではないかと疑いたくなる空疎さだった。アメリカに暮らす筆者にとっても、コロナとどう戦うかしっかり聞きたいところだったのだが、どちらの候補もそこに目新しい提案や決意は見せなかった。

 当然、コロナ対策は病気を抑え込むことと、経済を立て直すことが両輪でなければならない。今回の討論会を聞く限りでは、両者のどちらがホワイトハウスに入っても、やることは無尽蔵にカネを刷り、それを国民に配るだけのようだ。それが呼び水となって経済を活性化させるなら、一時的に財政赤字を許容することはできるだろう。しかし、二人の話を聞いていても、そうした経済の明るい展望は見えない。カネを刷るだけなら、その先にあるのは国民生活を破綻させる超インフレである。

 大国アメリカが沈み、夕闇に包まれる光景が遠くに見えるような討論会だった。

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