だったら隠れ蓑として、有名人とまったく同じ名前をつければいいかと思えばそうでもない。過去に「○○○容疑者、75歳男性をひき逃げ」というタイトルが5ちゃんにあったのだが、○○○は、モーニング娘。の元メンバーの名前だったのだ。当然同姓同名の別人だが、この時も名前を使って「タイトルで釣り」をし、以後そのメンバーを巡る議論が盛り上がったのだ。
さらに、「キラキラネーム」と呼ばれる名前も危険だ。警察署の爆破をネット掲示板で予告した女の名前が「未祐」と書いて「えめらるだす」と、松本零士の漫画『クイーン・エメラルダス』などに登場するキャラの名前と同じだったため盛り上がった。犯罪の内容はどうでもよく、犯罪と名前に関連した大喜利を次々とされ、自分の名前で勝手に赤の他人に盛り上がられてしまう。
だからこそ、いくら好きでも「卑弥呼」「玄徳(劉備)」「雲長(関羽)」「道三(斎藤)」などはつけない方がいい。「政宗(伊達)」「光秀(明智)」ぐらいであればまぁ、問題はなさそうだが、ネット時代の名付けは慎重に。「林」という苗字の人が息子に「虎男」とつけた場合も「和製タイガー・ウッズ、下着泥棒で逮捕」などとやられてしまう。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。近刊に『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。
※週刊ポスト2020年10月30日号