しかし、ブームだから増産すればいいというものではないのが、ウイスキーという商品の特徴だ。「白州12年」には、当然だが12年以上も熟成させた原酒が用いられる。増産するにも時間がかかり、せっかく原酒を増産しても、それを使ったウイスキーが市場投入される頃には、ウイスキーブームが去ってしまっている可能性もある。そうなると、せっかく増産した原酒と投資はムダになってしまう。増産は、大きな「賭け」でもある。
それでもサントリーHDは増産に踏み切り、増産設備の増強を続けている。今回報道された2022年に完成させる貯蔵庫も、その一環である。2022年までには近江エージングセラーも含めた国内3拠点の貯蔵能力は、現在よりも1割増えて、合計で約170万樽(1樽は200~500リットル)になるという。
需要についてもサントリーHD広報部は、「国内のウイスキー市場は、今後も数量ベースで年平均成長率3~4%程度で伸長していくと考えています」と明るい見通しを語る。愛好家だけのものという印象が強かったウイスキーは、広く一般的に飲まれ、誰でも楽しむ流れになってきていることは間違いない。今後もサントリーの読み通り、需要は増していくだろうか。
◆取材・文/前屋毅(フリージャーナリスト)