お兄ちゃんCMがウケる理由はどこにあるのか。ポイントは、「お兄ちゃんが二枚目」で、「家の中のシーン」になっているということ。アクションもやれば、シリアスもやる。二枚目俳優が、「お兄ちゃん」になって家にいると、途端にリラックスモードでこんにちは。「味の素」では、妹に「彼女にも(みそ汁)作ってんの?」と突っ込まれたり、弟に「うちは食堂じゃねえって言ってんだろ」と文句を言ったり、「お母さん、元気かな~」と、ホームドラマのような味わいになる。「おうち時間」が増えた今、家の中でのほっこりした内容は、共感を得やすい強みがある。
遠慮のない兄と妹という関係性だからこそ、言いたいことも言える。このさっぱり感も重要だ。コミックシーモアの竹内・中条のCMでも、よく見ると、後方で母親らしき女性が背中を向けて何かをしている。家でのんびりしている空気がいっぱいだ。別バージョンでは、涼真兄ちゃんがカメラ目線で女性マンガが充実していることを解説。「しょうがないから、妹に教えてあげるわ」と締めくくる。もしも、この2人が恋愛中のカップルという設定だったら、まったく違う空気になったはず。
CMですっかり三枚目兄ちゃんになった妻夫木聡は、ドラマ『危険なビーナス』でも、失踪中の弟の嫁と名乗る楓(吉高由里子)に「お兄さま」と呼ばれて、困惑しつつも「好みドストライク」の彼女と行動を共にできて、まんざらでもない様子。妻夫木→兄ちゃん→張り切り過ぎて大丈夫?という構図をCMで学習している私たちは、このドラマでも妻夫木お兄さまが痛い目にあうのではと、想像せずにはいられないのだ。