この日の収穫量は約15キロ。地表温度は適温とされる17度、生育環境が整っている割には「まだまだ少ない」(同前)という。
「明日以降顔を出してくれるかどうか。今年は収穫時期が平年より2週間ほど遅れているけど、このまま不作で終わる可能性もある。マツタケのことはまだわからないことが多いね」(同前)
自宅に戻ると出荷作業が始まる。身の大小や傘の開き具合で仕分け、計量して出荷用の桐箱の中に詰めていく。マツタケに付着した土は軽く落とすのみで、地中に埋まっていた石づき部分もそのままにしておく。
「ウチは個人を含めた直接取引が多い。市場や仲卸業者を介さないことで、消費者の手元に1日以上早く届けることができる。その1日で風味が全然違いますから」(同前)
マツタケ博士の言葉には、マツタケの栽培や生育だけでなく消費者への気配りも感じられた。
■取材・文/青野有城(Inu.)、撮影/八坂悠司
※週刊ポスト2020年11月6・13日号