6年連続1位「恵比寿」の評価
今年9月にもこの手の指標が発表された。MAJOR7(メジャーセブン)というところが出した「住んでみたい街アンケ―ト(首都圏/関西)2020年」だ。
MAJOR7というのは、住友不動産・大京・東急不動産・東京建物・野村不動産・三井不動産レジデンシャル・三菱地所レジデンスの7社だそうだ。自分たちのことを「メジャー」と名乗るのは、日本人の一般的なメンタリティとしてやや戸惑いを感じるが、一応この7社の大半は日本のマンション業界ではメジャーな存在であることも確かである。
同調査によれば、住んでみたい街で首都圏の1位~10位は以下の結果になったという。
1位/恵比寿
2位/目黒
3位/吉祥寺
4位/自由が丘
5位/横浜
6位/品川
7位/中目黒
8位/表参道
9位/二子玉川
10位/代々木上原
ここで「街」というのはおそらく鉄道の駅名を指すらしい。「横浜」というのを行政区だと考えれば広すぎる。「市」ということなら日本で最大規模の行政区だ。ここでは「横浜駅の周辺」ということだと理解しよう。そう考えれば、どの街もいかにも人気が高くてマンションの資産価値は下がりにくそうである。
一般の方々はこういう指標を見て、「では恵比寿で買えば間違いないのか」と考えがちである。まあ、そうともいえるし、そうでないともいえる。
「恵比寿」は6年連続で1位だそうだ。この中で順位が大きく変動したのは「品川」で、前年の2位から6位に順位を落とした。メディアの方はこういう指標を見て、「恵比寿の人気は底堅く、品川は人気が翳っている」と考えたりする。
しかし、私のようなマーケットウォッチャーや不動産業界人は、はっきり言ってこういう指標なんて「どーでもいい」と思っている。
不動産というものは、「どこにあるか」というのが最も重要な要素であることは確かだ。しかし「恵比寿」にあるからといってどんな物件でも買っていい、なんてことには絶対になり得ない。
また、10位の「代々木上原」は1位の「恵比寿」よりも9ランク分劣っているかというと、そんなこともまったくない。つまり、我々業界インサイダーにとってこういう指標は「参考」程度以下の存在である。
例えば、ある仲介業者がマンションデベロッパーのどこかに物件を持ち込み、「メジャー7のランキングで1位になった恵比寿の土地が出ましたが、御社のマンション事業用地にいかがですか」などと言ってきたら、「こいつは素人か」と思われて軽く見られるだろう。
業界人にとって、恵比寿と言える場所で物件が出れば「メジャー7のランキングで1位になった」などと枕詞をつけなくても、無条件で資料を丁寧に読み込む。それはこのランキングで10位以内に入っているところなら、すべて同じだ。
しかし「多摩ニュータウンの開発区域で…」とか「千葉の美浜区なんですが…」となると、「まあ、一応見てみるか」というスタンスになるのだ。