設置者のコリア協議会は在ドイツ韓国人の団体で、その主要なプロジェクトとして「慰安婦問題への取組み」を掲げている。結成は前身の時代を含めると40年ほど前と古く、当初から韓国の民主化運動に関わってきたことから、文在寅大統領も所属する共に民主党の流れを汲み、ドイツ国内では中道左派のドイツ社会民主党(SPD)と深い関係を維持してきた。
SPDはドイツ連邦議会で議席の22%を占める2番目に大きい勢力で、最大勢力をもつ保守系のキリスト教民主・社会同盟と連立政権を組んでいる。ミッテ区から像の撤去命令が出されると、SPDミッテ区支部は12日付で、「慰安婦像の保護と透明な議論」を要求する声明文を発表した。また、韓国出身の妻をもち、像の撤回命令を取り下げるよう当局に書簡を送ったシュレーダー元独首相もSPDに所属している。
ちなみに茂木外相が撤去を申し入れたマース外相もSPDの所属である。マース外相は日本側からの要求をミッテ区に伝えることはしたが、前述のSPDミッテ区支部による声明文を読む限り、所属する政党の支部の方針を変えるまでには至らなかったようだ。
振り返れば、これまで韓国以外の国々で行われた慰安婦像設置運動は、現地在住の韓国系住民と、それに同調する地元の有志らによって支援されることが多かった。だが、今回のベルリンのケースは、コリア協議会の背後にドイツと韓国の主要政党の存在がチラつく点で、大きく異なっている。
文大統領の任期はあと1年半ほどだが、大統領の支持率と不支持率は今も拮抗しており、次期大統領が共に民主党から出る可能性は十分にある。もしそうなれば、ドイツで慰安婦像がさらに増殖していくことになるかもしれない。