世界と比べて日本人は“性差(ジェンダー)”を学習する機会が圧倒的に少ない
「あまりの反響の大きさに驚いています」
そう心境を語るのは、国立歴史民俗博物館(千葉・佐倉市)の教授で、現在開催中の「性差の日本史」のプロジェクト代表を務める横山百合子さんだ。国立の歴史博物館がジェンダーをテーマに企画展を開催するのは初の試みであり、都心からやや距離があるにもかかわらず、平日でも会場は大勢の来場者でにぎわう(12月6日まで)。
メディアの取材も殺到しており、「挑戦的なテーマ」「攻めた展示」と各方面で取り上げられているが、横山さんはそうした声に逆に衝撃を受けたと明かす。
「日本の歴史学の研究者にとって、ジェンダーというのは、メジャーとはいえませんが、決して特殊なテーマではありません。欧米でもアジアでも、博物館にジェンダーの常設展があるのは当たり前のことです。今回、『挑戦的』と大きな反響をいただいていることは、ありがたい半面、これほど研究成果が知られていないのはショックでもありました」(横山さん・以下同)
日本でも、10年ほど前から「ジェンダー」という言葉を公で見かけるようになってきた。しかし、市民が深く関心を抱いて学習する機会はほとんどなく、世界と比べて圧倒的に遅れていることは否定できない。
そんな日本のジェンダー研究においては、他国より有利な条件もあるという。
「1つの国として日本は古代から現代まで非常に長い歴史を持ち、かつ文字の史料が全国津々浦々に残っています。このため歴史のなかで、ある時代のジェンダーが次の時代にどう変化したのかが見えやすいのです」
企画展示では、書状や日記などの古文書のほか、埴輪や着物、絵図や絵巻など貴重な史料がふんだんに展示されている。
※女性セブン2020年11月19日号