米司法省は10月28日、米国内で中国政府による国外逃亡犯を摘発する「キツネ狩り作戦」に関わったとして、中国の「工作員」8人を刑事訴追したと発表。そのうち5人が逮捕され、残りの3人は中国に戻ったとみられる。
中国の習近平指導部は、海外に潜伏する汚職官僚らを追跡する「キツネ狩り作戦」を2014年から展開している。汚職官僚ばかりでなく、米国に合法的に亡命している民主化運動指導者ら反体制派人士も追跡対象に含まれている。
米連邦調査局(FBI)のクリストファー・レイ長官は、今回の工作員8人の訴追は中国が広範囲で進行させている違法行為の新たな証拠を示すものであると認識、米政府は中国の違法行為を容認せず、中国に違法行為をやめるよう警告している。米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
裁判所に提出された書類によると、米国と中国が犯罪人引き渡し条約を締結していないこともあり、中国側は不法工作員を汚職官僚らの主要な逃亡先になっている米国に送り込んでいるという。今回、訴追された8人は共謀して、2016年9月から2019年11月ごろにかけて、米国在住の複数の中国人を尾行したり、脅迫したりなどして、帰国を強要していたとのこと。
中国の「キツネ狩り」は表面上、汚職との戦いとして、国外に逃れた経済犯罪の容疑者を摘発するとの大義名分のもとに行われている。しかし、ジョン・デマーズ米司法副長官はRFAに対して「事実上、中国の最高指導者である習近平主席が海外の反体制派を摘発する手段として利用している」として、「多くの場合、中国側に逮捕されたのは習氏の方針に政治的に反対している反体制派だ。これらの行為は法の支配と国際規範に明らかに違反している」とコメントし、中国を強く批判した。