外気温の影響は「大」
今回の調査で最も驚かされたのが、スマホタイプD社の結果だった。
5人が、それぞれが5回ずつ、合計25回測定したが、そのうち7回が36.5℃で、あとはすべて36.6℃であった。他の体温計で測定すると5人の体温はそれぞれ異なるのに、なぜかDで測った時だけは、5人の体温がほぼ同じになってしまったのだ。何度測っても結果は同じに。一体なぜなのか。
試しに50℃ほどのお湯に浸したタオルで額を温めてから再びDのスマホの前に立ってみると、今度は『測定不能』という表示が。
AI顔認証検温器の研究開発をするヒューロン株式会社の趙俊来代表が「あくまで推測ですが」と前置きしたうえで次のように指摘する。
「タブレットで顔認識をする装置は以前から存在しました。新型コロナの蔓延により、非接触型の体温計の需要が急激に伸びたため、顔認識用の機器に無理やり温度測定モジュールを載せたものが粗製乱造されたのだと思います。
そうした機種の中にはご指摘のような“不具合”ともとれる検査結果しか表示しないものも一部あるようです」
また、非接触型体温計には、ハンディタイプ、スマホタイプともに共通の“弱点”が存在するという。トリプルアイズ社の担当者が言う。
「非接触型体温計には外気温に影響されやすいという性質があります。炎天下で皮膚が熱せられれば体温も高く出がちで、冬に皮膚が冷やされれば体温も低めに出やすい。この問題をどうクリアしていくかが今後の課題です」
体温測定法について詳しい医学博士の相原弼徳氏が語る。
「正確な体温を測りたければ、腋の下や舌の下などに入れる接触型の体温計を使用するほうがいい。とくに高齢者は体温が低い傾向にあるので、腋窩(腋の下)体温計などで日常的に検温し、自身の平熱を把握しておくことが肝心です」
あなたがよく行く施設の非接触型の精度は果たして──。
※週刊ポスト2020年11月20日号