テレビ局の中で特に高評価を得たのは、民放のSBSだ。「2017国民の選択」という番組で、開票中継を面白おかしく報じたことでSNSで大きな話題になり、政治に関心が無い人も一度は中継を見てみよう、という気持ちにさせる効果があったとして高く評価されたのだ。SBSは、2018年や2020年に行われた地方選挙でも開票中継に力を入れた。「政治は感動である」というキャッチフレーズのもと、韓国のアイドルオーディション番組「Produce 101」のパロディ映像を制作。アイドルさながら候補者らにダンスをさせるなどして選挙戦を盛り上げた。
米大統領選は、選挙人制度という特殊な事情もあるが、それでも開票中継が面白くないので、韓国ネットユーザーは「AI観相(人相)占い」アプリを使ってトランプ氏とバイデン氏のどちらが“王”になる観相かを点数にして比べたり(AI観相占いはトランプ氏の方が点数が高かった)、2人の生年月日から2021年の運勢を占ったりして勝手に楽しんでいた。
米メディアは、2017年の韓国大統領選の開票中継について「The Crazy Ways South Koreans Watched the Election(クレイジーなほど面白い)」と紹介したほど。今回の大統領選でも、韓国ケーブルテレビのニュース専門チャンネル「YTN」のアナウンサーが中継中、「(米大統領選が“地味”)ゆくゆくは韓国流の開票中継が、K-選挙(K-POPのK)として海外に広がっていくのではないでしょうか」と話していたのが印象的だった。
【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。