巨星堕つ──。11月12日、歌舞伎俳優・坂田藤十郎さんが亡くなっていたことがわかった。死因は老衰だった。享年88。報道陣の取材に対応した妻で女優、元参議院議長の扇千景さん(87)によると、「前日には散髪もし、眠るように息を引きとった」と大往生だったという。
藤十郎さんといえば、その深みのある芸とともに注目されたのが、女性関係だろう。若い頃からたびたび浮き名を流していたが、2002年、70歳の時には19歳の舞妓との浮気騒動が取り沙汰された。『フライデー』で報じられたホテルでバスローブの前をはだけた姿は大きな話題になったが、会見では「一生青春。70歳なのにこんなふうに報じられてうれしい。世の男性も頑張って」と堂々と答え「さすが歌舞伎役者」「あっぱれ」と世の男性から喝采を浴びた過去がある。
そんな藤十郎さんを傍で支え続けたのが、他ならぬ扇さんだろう。件の騒動の時にも扇さんは「女性にモテない夫なんてつまらない」と豪語し、余裕をのあるおしどり夫婦ぶりが話題になった。
今年6月、本誌・週刊ポストが、東出昌大(32)やアンジャッシュ・渡部建(48)など芸能界で不倫が相次いでいる現状についてコメントをもらおうと訪問した際にも、扇さんは「なんだか大変そうですけど、わたくしからお話しすることなんて、そんな。何もないですよ。すいませんね」──そう言って、大女優の風格を漂わせながら優雅な足取りで去っていったのだった。さすが「人間国宝の妻」である。
扇さんは、報道陣の取材に対し、「縁あって63年、一緒にいられたことが幸せです」と語った上で、「昨年の87歳まで一度も舞台を休んだことがなく、風邪もひかないで芸能人生を過ごせたことは皆さんのおかげです」と周りへの感謝の思いを述べていた。
多くの女性と噂があった藤十郎さんだが、扇さんという妻と「一生青春」の人生を送ることができたのは幸せだったのだろう。ご冥福をお祈りします。