菅・竹中ラインと一線を画す麻生副総理(時事通信フォト)

菅・竹中ラインと一線を画す麻生副総理(時事通信フォト)

 そうして総務大臣になった竹中が、副大臣に菅を選んだのだという。

「菅さんが副大臣になれたのは、郵政民営化に関する自民党部会がきっかけだと思います。菅さんが自分で言っていました。『部会は郵政シンパの議員が多いので、反対論ばっかり出る。それで、反対ばかりではおかしいだろ、と発言した。そうしたら、次の郵政部会から菅さん来てくれと、(竹中に)頼まれるようになったんだ』と」

 平嶋がこう言葉を足す。

「そして、竹中さんが小泉さんから誰を総務副大臣にすればいいか、と問われ、菅さんを推薦したはずです。それ以来、菅さんはずっと竹中さんに対する恩義を忘れてない感じがします」

 竹中・菅ラインはここから固く結ばれた。小泉政権時代の看板政策だった郵政民営化は、竹中総務大臣、菅副大臣のコンビで推進した。一方、麻生と竹中は犬猿の仲となり、必然的に麻生と菅の間にも距離ができた。

 総務大臣の竹中は菅に放送と通信の融合政策を授け、NHK改革などを任せた。今にいたるNHK改革の原点もまた、竹中から託された政策だ。と同時に、それまで大して実績のなかった菅が政権内で徐々に認められるようになる。

 そうして菅は第一次安倍晋三政権の発足した2006年9月、郵政民営化兼地方分権改革担当の総務大臣に就任する。竹中の進める新自由主義による格差批判が起こり、竹中に代わって菅が大臣に昇格した格好だ。先の平嶋が言葉を加える。

「あの頃、山本有二さんたちを中心に安倍さんを総理にしようとする再チャレンジ支援議員連盟が立ちあがり、そこに菅さんも有力メンバーとして加わっていました。安倍内閣が実現し、金融担当大臣になった山本さんは安倍さんに『菅も何とかしてやってほしい』と頼んだそうです。それで蓋を開けると菅さんが総務大臣。山本さんは『なんで俺が金融担当で、菅が総務大臣なんだ。俺がなりたかったよ』と愚痴っていたけど、菅大臣が実現したのは、やはり竹中さんのおかげでしょう」

 第一次安倍政権は小泉政権の“継承”を義務付けられた。郵政民営化を完成させるためには、竹中・菅ラインしかないという結論に至ったのだという。

 政治家としての菅のスタートは、運輸族議員の小此木彦三郎事務所時代であり、秘書として支援者の陳情を捌いてきた。市議から国政に転じた後、竹下派や加藤派を渡り歩いてきた菅は、それまで永田町でもさほど名の売れた議員ではなかった。だが、総務大臣として初入閣し、そこからメキメキと頭角を現わしていく。

【プロフィール】
森功(もり・いさお)/1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2016年に『総理の影 菅義偉の正体』を上梓。他の著書に『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝 ヤフーを作った男』など。

※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン