決勝で自分を奮い立たせた伊調馨の逆転メダル
2008年には国体・高校選抜・インターハイ合わせ、ダブルスで勝利し、3冠を達成。日本一を決める11月の全日本総合選手権大会では3位に入るなど、その実力を開花させた彼女たちは、高校卒業後、実業団の日本ユニシスに入社。21才のときに国際大会の派遣資格を持つナショナルA代表に選ばれ、2011年には全日本総合バドミントン選手権大会で初優勝。以降、数々の国際大会で優勝をし、勢いに乗る。
彼女たちが強くなれたのは、韓国出身で日本代表ヘッドコーチのパク・ジュボンさん(55才)と女子代表コーチのテイさん(日本名・中島慶・58才)の存在が大きいという。
「パクさんにはトータルで、テイさんには技術的なことはもちろん、精神的にも支えてもらいました。五輪代表に選ばれるには、選考レースと呼ばれる対象の大会に出る必要があるのですが、リオ予選の途中で、松友がけがをしてしまい、2大会ほど欠場することになってしまったんです。
不安な気持ちをテイさんに打ち明けると、『不安になっても意味がない。君たちが目指すのは五輪の金メダルなのだから、いまは不安がっていないでやることがあるだろう』と言われて、ハッとしました。
とかく勝負では、勝とうと思う気持ちばかりが空回りすると、うまくいかない。勝ちにこだわるよりも、自分の力を100%出せるように心がけることが大事だとも教わりました。心をそう切り替えて、私は練習に、松友は体を治すことに専念した結果、再び大会に復帰して結果を出せるようになったんです」
そして何より、伊調馨選手の存在も大きかったという。決勝前日、レスリング女子58kg級の決勝戦を選手村のテレビで見たという。伊調選手はリードされていたものの、なんと残り4秒で大逆転! 金メダルを取ったのだ。それを見て、彼女の心に火が付いた。
「私たちの決勝のときも、16対19と相手にリードされて窮地に立たされました。でもそのとき、『伊調さんはこんな場面から逆転した! 私もここで頑張れば、伊調さんのようになれる』と踏ん張りました。
そして5連続で点を取り、逆転!勝った瞬間は何が起こったのかわかりませんでしたが、テイさんたちが駆けつけてくれ、涙があふれました」