ふと母を見れば、コロナ自粛でぼんやりしているが、体はいたって元気だ。ここで励ますべきはMおばさんだと思い、ビデオ通話に踏み切った。
「えー! Gさんががん!?」
事前に説明したのに改めて驚く母。でも妹のピンチに認知症を忘れたように、声も言葉も明瞭になり、Mおばさんもつらい思いを吐露し始めた。
「すごくやせちゃったのよ。いろいろ調べて体にいいスープとか作るんだけど、少し動くと疲れて、機嫌が悪いの」
「あのね、たくさん食べられるようになると元に戻るわよ。うちのパパもそうだった」
母の言葉で私も思い出した。20年以上前、亡父も大腸がんを患ったのだ。その記憶をここで見事に生かすとは……。
「やっぱり男はダメね~。いま、がんは治るのよ。しっかりね」と、母が力強く励ました。
母に最新のがん情報がインプットされていることにも驚きながら、長い人生、老いてからも苦難が待っているものだとしみじみ思った。
「コロナもあるし、Mおばさん大変だね」と、スマホを閉じながらつぶやくと、「えっ、Mちゃんがどうしたの?」と、いつもの母に戻っていた。
先頃、Gおじさんの食欲も体力も回復しつつあると連絡があった。よかった! 母のアドバイス通りになった。
※女性セブン2020年12月17日号