「永瀬さんには、私の製作した映画『戦争と一人の女』で、原作者である坂口安吾自身がモデルの主人公を、江口のりこ演じるヒロインの娼婦との絡み場面も含めて鬼気迫る熱演で表現してもらいました。
若き日の『濱マイク』シリーズ(1994〜1996)や『息子』(1991)も忘れられませんが、40代後半になった2010年代以降の活躍もめざましいです。『毎日かあさん』(2011)をはじめとして、メジャーの第一線に立ち続け、中年男の魅力をさまざまな形で発しています。また、学生映画(!)から台湾映画『KANO』(2014)など国際的な作品まで、活動の幅の広さにも驚かされます」(寺脇研氏)
永瀬は長年にわたって唯一無二の存在感を放ってきた。『濱マイク』シリーズのほかにも、話題を呼んだヒット作は多い。しかし今こそ時代が追いついてきたのだ、と映画ライターのSYO氏は語る。
「永瀬正敏さんの魅力は、演技力はもちろんのこと、やはり空気感かと思います。映画のほうが愛さずにはいられない、作品世界の中に置きたくなる“物語性”。単なる『雰囲気のある俳優』とは根本的に違っていて、永瀬さんの場合は言葉の壁を優に超えるレベルまで感性が傑出しているから、すごいですよね。『パターソン』(2016、米独仏)でも『64 ロクヨン』(2016)でも『光』(2017)でも、国内外問わずどんなテイストでもハマってしまう。
そしていま、永瀬さんに時代がどんどん追いついてきた感があります。2019年には6本の出演映画が公開され、今年は『星の子』や『さくら』など、なんと8本の映画が公開。乗りに乗っている永瀬さんから、目が離せません」(SYO氏)
『BOLT』をきっかけに、『濱マイク』シリーズのタッグも新境地に突き進んでいくのではないだろうか。2020年代の永瀬正敏の活躍が楽しみだ。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)