北朝鮮はいつでも「任意発射」できる態勢に

 日本上空を通過した弾道ミサイルではないが、過去には前例のない地点から、早朝・深夜に移動式発射機(TEL)を用いて複数発発射(2014年以降)したこともある。これは、任意の地点から任意のタイミングで発射できることを示すものだ。

バイデン次期大統領は北朝鮮の暴発を止めることができるか(AFP=時事通信フォト)

バイデン次期大統領は北朝鮮の暴発を止めることができるか(AFP=時事通信フォト)

 今後は、米国の偵察衛星に発射兆候を捕捉される前に移動式発射機(TEL)から大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するかもしれない。また、近い将来、現在2隻建造中といわれる新型潜水艦から、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の長距離発射実験を行うだろう。

 移動式発射機(TEL)や潜水艦を使用する場合、任意の地点からの発射が可能であり、発射兆候を事前に把握するのが困難になる。

 発射兆候が把握しにくくなった一方で、北朝鮮側が発射を予告したことがある。「島根、広島、高知の上空を通過し、3356.7キロを飛行した後、グアム周辺30~40キロの海上に着弾する」と計画の概要を明らかにしたのだ。その直後2017年8月29日、実際にグアムを攻撃可能な中距離弾道ミサイル「火星12」を発射した。

 結果的にミサイルは北東方向に向けて発射され、グアム周辺に着弾することはなかったのだが、あえて韓国での米韓合同演習期間中に発射したことは、米国に対抗する強い意思の表れと言えるだろう。

 トランプ政権下では米国を刺激することを「自粛」していた北朝鮮だが、バイデン政権下では、よほど米朝交渉が北朝鮮にとって有利に進まないかぎり、弾道ミサイルを用いて米国に譲歩を迫ることになるだろう。

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