しかし本作では、線の細いかつての姿はない。五代が刀を構えた時にスクリーンから伝わる気迫には、客席で思わず息を呑んでしまったほど。もちろん、カメラワークや演出の効果も大きいだろうが、三浦さんの鍛え上げられた体幹をはじめ、凛々しい表情や主役としての存在感など、これまでの経験から培われてきたものがスクリーンいっぱいにみなぎっていた。『天外者』での演技には、まさに彼の集大成のようなものが垣間見られ、三浦さんの生き様が刻まれているようだった。

 五代の活躍を追っていると、彼を演じる三浦さん自身とどこか重なるものも感じた。両者の共通点を一言で言えば、周囲を魅了して止まず、変えていく点である。劇中で五代は、「誰もが夢を見られる国にするんじゃ」という印象的なセリフを口にするが、これは、五代の強力なリーダーシップのもと、周囲と手を取り合って明るい未来を作ることを見据えた言葉。その言葉を口にする彼自身が皆の希望となっている。

 三浦さんが生涯をかけて取り組んできた「俳優」も見る者に多くの夢を与える職業であり、彼の作品にかける熱量やプロ意識、全身全霊で挑む姿は強いリーダーシップを発揮し、周りのキャストやスタッフにも大きな影響を与えていたことだろう。黎明期の日本において多くの人に影響を与え、激動の時代を駆け抜けた五代との重なりを感じずにはいられない。

 かくいう筆者も、三浦さんからは多くの影響を受けてきた一人だ。1990年生まれの同い年であり、彼の活躍は早い段階から追ってきた。そんな中でも、2019年に上演されたブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』での彼の姿は鮮烈に印象に残っている。2013年に本場で同ミュージカルを観劇し衝撃を受けた三浦さんは、日本版が上演される際には必ずや自分が演じたいと熱望し、オーディションを経てドラァグクイーンのローラ役を射止めたという。広大なステージ上で堂々と歌い、キレのあるダンスを披露する彼の自信に満ち溢れた姿と笑顔は忘れられない。目標のため自身に大きなハードルを課し、そのために鍛錬を積み、やがて達成する姿をステージ上で目の当たりにした筆者は、勇気をもらい、夢を見せてもらったのだ。あの劇場にいた多くの人がそう思ったのではないだろうか。

 そうした三浦さんの生き様が、偉業を成し遂げた五代友厚という人物との重なりを感じさせた。五代と同様に語り継いでいくべき人物である。

【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。

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