「世の中には、当たり前になり過ぎて、もはや誰もが納得することも、ツッコむこともなくスルーしているものがたくさんあります。でも、冷静に考えてみると変なことばかり。岡崎体育は、そういう物事をかき集めてネタにしている部分がおもしろいのではないでしょうか。

 泣ける系の作品では、この“変、違和感”というものを、“感動できる、再評価すべきもの”に置き換えて表現しているのだと思います。私は『家族構成』という人気曲を聴いたときグッときました。家族の絆こそが宝物だという、当たり前といえば当たり前のメッセージなのですが、あらためて突きつけられるとその大切さに気付かされます。

 そう言う意味では、当たり前のことをちゃんと言う、という点が岡崎体育の魅力ではないでしょうか。妙に格好をつけていませんよね。“当たり前”とは、まさに“当たり前”なので、当然ながら絶対数は多く、ネタになりえるものがいっぱいあります。だから自然と、表現する物事の幅も広くなると思います。そして、ネタ元の研究や取材をちゃんと行なって、自分なりの解釈と考察を深め、誰でも共感できるような手法へ落とし込むところが、岡崎体育の秀でた才能であると考えます」(田辺氏)

 正反対の雰囲気の楽曲を生み出しているが、それらの根っこには共通して、岡崎の優れた観察眼がある。そして、その観察眼は、近年ますます増えてきたプロデュース業にも活かされているのかもしれない。2019年6月に開催したさいたまスーパーアリーナでの単独公演後、実は引退も視野に入れていたという岡崎。この世に“当たり前”がある限り、彼は名曲を生み続けるのだろう。

◆取材・文/原田イチボ(HEW)

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