「土屋さんと言えば、NHK連続テレビ小説『まれ』(2015)で主役の座を射止めたあとは、青春映画のキラキラしたヒロインを務めることが多く、明るく元気、健気で真面目なパブリックイメージがあると思います。実際、インタビュー等でどんな質問に対しても誠実に答える姿は、彼女の本来持つ特性だと思います。

 こうした本来の性格を活かした役柄も溌剌として良いのですが、パブリックイメージとは逆の、陰を含むキャラクターを演じたときに女優としての魅力が増すように感じられます。

 後に映画化もされたドラマ『鈴木先生』(テレビ東京系)では、憂いのあるクールビューティー役を好演。2018年公開の映画『累 -かさね-』では、芳根京子さんと共に嫉妬と欲望、劣等感という負のパワーに支配される主人公を熱演しています。

 2017年11月に開催されたTAMA映画賞の受賞式で、土屋さんは最優秀新進女優賞を受賞しました。その際に壇上で『涙が溢れる温かい言葉もあれば、心をえぐる冷たい言葉もありました』と女優活動を振り返り涙したシーンがあり、土屋さんの、マイナスな言葉もしっかりと受け止める、人間としての懐の深さを感じました。だからこそ一筋縄ではいかないキャラクターを演じたとき、より立体的な人物造形ができるのかなと思います。

『今際の国のアリス』でも、過去に深い傷を持つ女性・ウサギを演じていますが、持ち前の身体能力を活かした“動”の芝居と、負の感情をにじませる“静”の芝居で、作品に彩りを添えています」(磯部氏)

 クセのある役どころを魅力的に演じることができるのは、そのキャラクターの陰にどこまでも寄り添おうとするから。陰と陽、どちらも表現できる理由には、土屋自身の優しい人柄が関わっているようだ。

◆取材・文/原田イチボ(HEW)

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