◆結婚していく同期に思うこと
女子会は恋バナで盛り上がることが多かったが、美莉さんはもっぱら聞き役だったという。
「人の恋愛話って、少女マンガを見てる感じで楽しんですよ。最初のうちは、美莉はどうなの? って私も聞かれていたけど、私には何もないことがわかってくるから、聞かれなくなっていきましたね。そのぶん、相談相手というか、聞き役として、重宝されていたと思います」
アラサーになると、女子会メンバーのなかで、一人、また一人と、結婚する友人が出てきた。そのたびに美莉さんは結婚式によばれ、祝福をする。出産を機に会社を退職するメンバーもいて、仲良し同期の環境は、働く者と無職、既婚と独身、子持ちと子なし、持ち家と賃貸……と、少しずつ、隔たっていった。それでも美莉さんは、同期の仲間を大事に思う気持ちに変化はなかったという。
「私自身の生活が充実していたからかもしれません。30歳になる前くらいかな、仕事でチームリーダになって、楽しくなってきたんです。実はその頃、社内制度を利用した留学も考えていて、結婚していないことに対する負い目とか、他人へのうらやましさは、あまりなかったですね」
しかし、他のメンバーはそうではなかったようだ。久しぶりに開催した女子会で、美莉さんは、仲良し同期の間に生まれた溝に気づく。
◆可愛がられている反面、下に見られる存在
「あるとき、まだ会社で働き続けている4人で会ったんです。一人は既婚者で、私含めて3人は独身。私以外の2人は、早く結婚したがっていて、その時付き合っている彼氏の愚痴とか、婚活の話をしていました。そんなときに、2人から『美莉はこのなかでいちばん結婚が遅いよね』って言われたんです。そうだろうなと思って同意したんですが、帰りに、既婚者の友達に、『美莉、マウンティングされてるよ』って教えられて、びっくりしたんです」
いつしか、誰が早く結婚するかの競争になっていたようだ。美莉さんにそのつもりはなかったが、自分の恋愛の話を一切しない美莉さんは、友人たちにとって信用ならないと映っていた面もあったかもしれないと振り返る。実際、美莉さんにも、告白されたり、デートしたりというはあった。だが、付き合うまでに至っていないため、わざわざ話すほどのことでもないと判断していた。
「6人のなかで私がいちばん地味で大人しいタイプだったので、可愛がられている反面、ちょっと下に見られてるようなところはあったんです。意識するようになると、『まだ(結婚していない)美莉がいるから安心』とか、『美莉は結婚難しいよね』とか……あなたたちも結婚してないのになぜ? と思うようなことを言われていることに気づきました」