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2021.01.04 07:00  SUUMOジャーナル

パリの暮らしとインテリア[8] 壁のカラーリングで狭くて暗い部屋が大変身! 建築家のアパルトマン

(写真撮影/Manabu Matsunaga)

女性の建築家、カミーユ・エチヴァンさんは、パリによくある陽の光があまり入らないアパルトマンに住んでいます。部屋ごとに壁の色や壁紙を変えることで、見事に明るい印象のアパルトマンに変身させました。壁に手を加えることでここまで素敵になるというお手本のようなおうちです。連載【パリの暮らしとインテリア】
パリで暮らすフォトグラファーManabu Matsunagaが、フランスで出会った素敵な暮らしを送る人々のおうちにおじゃまして、こだわりの部屋やインテリアの写真と一緒に、その暮らしぶりや日常の工夫をご紹介します。人気が出ることを予想して20年前に20区に引越しパリの住宅価格の高騰のため、今では「パリで家が買えるとしたらもうこのあたりしかない!」と注目度のとても高いカルチェ(地区)の19区と20区。カミーユさんのアパルトマンは20区の坂の多いメニールモンタン地区にあります。
パリ中心部へのアクセスはメトロで10分程度、それなのに20年前は、とても静かで、お店もそれほどありませんが、特に物価が安くて住みやすい地域でした。しかしカミーユさんは、きっとここは人気になるだろうと予想してアパルトマンを探し始めたそう。
近くには大きなベルヴィル公園があったり、あまり知られていないパヴィヨン・ボードインという18世紀の美しい石造りの邸宅もあり、散歩をしたり、くつろいだりすることができる場所がたくさんあるのも、この地区でアパルトマンを借りる決め手となったとか。
最初は友人と共同でアパルトマンを借り、今はカミーユさんと11歳と14歳の息子さん、雄の子猫“SUN”という家族構成で暮らしています。

年に3回描き変えられるパヴィヨン・ボードイン邸宅の壁のストリート・アート。壁の向こう側には、公園と、今はミュージアムになっている邸宅がある(写真撮影/Manabu Matsunaga)

20年前は静かだった通りも、色々なお店ができてにぎわっている。このパン屋&サロン・ド・テがカミーユさんのお気に入り(写真撮影/Manabu Matsunaga)

壁紙で部屋を明るい印象に「このあたりに住みたいと漠然と思っていた時、たまたま通りかかった建物の管理員が”アパート貸します”と、張り紙をしていたんです」とカミーユさん。そのころは子どももいなかったので、65平米で寝室2部屋、サロン、ダイニングのあるこのアパルトマンは、友人と2人で住むのにちょうどよかったそうです。
「契約者が2人で連名契約ができる、パリでも珍しい物件でした。何年か後に友達が出ることになったので、通常の1名契約に切り替えて住んでいます」
仕切りなどは入居当時のままで、自分と子どもたちだけになったことを機に大改装をしたそう。フランスでは、賃貸物件でも引越す時に元に戻せば自由に壁に色を塗ったり、壁紙を張ったりしてもいいというのもお国柄。パリではありがちな光のあまり入らないアパルトマンを、建築家の専門知識を活かして明るい雰囲気に仕上げました。

3人暮らしになった事を知人に知らせるポストカード。改装前の部屋の写真を見るとやはり暗いアパルトマンだったことが分かる(写真撮影/Camille Etivant)

「この壁紙を張ったことによって、部屋の雰囲気がガラッと変わりました」とカミーユさん。これによって部屋を変えていくアイデアがつぎつぎと浮かんできたそう(写真撮影/Manabu Matsunaga)

まずはアパルトマンの部屋の中で一番目を引く植物柄の壁、「通路の壁で家具を置くことができなかったところを、植物の雰囲気のある“強い”パターンの壁紙を張りました」とのこと。

ペリカンのクチバシの黄色に合わせて、寝室の扉と壁の一部を黄色にしようと思いついたそう。これによって、ただの白壁だった空間が奥行きのあるものになり、アパルトマンの印象が大きく変わりました。

ハビタ(Habitat)で見つけた籐ランプ。アームチェアはイームズ。チェストの上には植物を欠かさない(写真撮影/Manabu Matsunaga)

ブルーの壁のダイニングはペンキ選びにこだわった「L字型のサロンには大きなテーブルが置けるスペースがあり、ダイニングとしてどうにか活用したかったのです」とカミーユさんは言います。もともと陽の光が入らない間取りだったけれど、この空間を心地よいものにしたかったそう。
そこで一面だけ壁をブルーに塗ることで空間にメリハリが出るのでは?と思いついたそう。自分でペンキを塗ったという壁は、フランスのペンキの高級ブランドRessourceのSarahLavoineという色を選びました。
フランスでは、ペンキの色だけではなくブランドにこだわる人が多いのです。
このブランドのブルーは、微妙な風合いの“強い”色。ブルーは冷たい印象になりがちだけれど、逆に温かみも持ち合わせているそう。それによって開放感も出て、明るいイメージになったようです。
ここに置いたテーブルで、食事をするだけではなく、子どもたちは勉強をしたり、時にはゲームをしたりするそうです。

「ブルーの壁で動植物の宇宙をつくりたかった」とカミーユさん。ドライフラワー、ゼブラの写真、サボテンなどの観葉植物で演出 (写真撮影/Manabu Matsunaga)

ダイニングとサロン。左にあるチェストはバタフライ式で、机を広げるとカミーユさんの仕事場になるこだわりのミッドナイトブルーのペンキで自分で塗り替えた(写真撮影/Manabu Matsunaga)
濃紺なので黒に見えてしまいますが、これがミットナイトブルーのチェストです。

家族が多くを過ごすサロンは飾るための部屋「サロンはこの家で唯一白い壁にしています」とカミーユさん。サロンはくつろぐための部屋であると同時に、飾るための部屋でもあります。壁には絵が飾られ、チェストの上の壁には小さな鏡が数個吊るされています。
カミーユさんはソファからダイニングのブルーの壁を眺めるのが好きなのだとか。ダイニングでも家族は集うけれど、サロンで過ごす時間が一番多く、子どもたちも自分の部屋にいるよりも大好きだそう。
「このサロンで自分の好きなものに囲まれながらくつろいでいると幸せを感じます」と言います。
このサロンも陽の光があまり入らないので、窓際には大きな鏡を置き、光を部屋の中に取り込む工夫をしています。

ソファとローテーブルをグレーで統一。通路の壁紙がインパクトあるので家具は抑えめの色をチョイス(写真撮影/Manabu Matsunaga)

60年代につくられた本棚は、無垢材に丁寧にニスが塗られた良いものをeBay(個人間売買サイト)で購入。
彼女の祖母が使っていたアームチェアをフランスの生地メーカー『ピエール・フレイ』の生地で再装飾(写真撮影/Manabu Matsunaga)

祖母からゆずり受けた鏡はleboncoin(個人売買サイト)で購入したレコード入れの棚の上に(写真撮影/Manabu Matsunaga)

小さい棚も取り付けた。左から、インドの旅で見つけた写真、昔の写真機に使われていた鏡、50年代のビーチの写真、サイン入りのイタリア人作家のリトグラフ、パリの小さいギャラリーで出会った写真。ここでも鏡が効果的に飾られている(写真撮影/Manabu Matsunaga)

フランス人デコレーターのピエール・グアリッシュのキャビネットの上には、3つの鏡のほかにフランス人デザイナーのイオナ・ヴォートリンによるゴールドのランプや、デンマークの家具ブランド「フリッツ・ハンセン」の「IKEBANA JAIMEHAYON(花瓶)」が飾られている(写真撮影/Manabu Matsunaga)

子ども部屋と寝室は壁を2色に塗り分けることで、広々とした印象に子ども部屋にも彼女の職業の知識がふんだんに活かされています。天井が3mくらいと高かったので、メザニン(中二階)をつくって息子たちのベットを配置しました。以前はとても狭かった床が広々としたそう。
「自分で設計して、できるだけお金もかけないようにしたから、木の素材はむきだしのまま。そのかわり、壁はペンキにこだわって自分たちで塗りました」
下の方は明るいブルーに、メザニンの高さより上と天井は白にすることによって、さらに広々と明るい空間を演出しました。

メザニンのベッドは「秘密基地みたいでうれしい」と二人。それぞれのベッドの間は薄い板で仕切られているのでプライバシーを保つことができる(写真撮影/Manabu Matsunaga)

シングルベッドを2台置くと狭いけれど、メザニンをつくってからは子ども部屋が広く使えるようになり、子どもたちも満足している(写真撮影/Manabu Matsunaga)

「私の寝室は白と薄いグレーのツートーンにして落ち着いた雰囲気に仕上げました。壁の2色とカーテンの薄い紫のグラデーションが好きです。季節によってベッドカバーを変えると、部屋の印象が変わるんです」
家具は中古品を個人で売買するwebショップのleboncoin(個人売買サイト)やブロカント市(アンティークまで古くない物を売る露天市)で購入。新しい物よりも古い物の方が味があって、人と違った空間をつくることができるから好きなのだそう。

サロンから見た寝室「この全ての色のバランスが私にとってパーフェクトなんです」と語る(写真撮影/Manabu Matsunaga)

寝室の窓際に置くことによって光が拡散して明るくなる。鏡は古い洋服ダンスから鏡だけを外したもの(写真撮影/Manabu Matsunaga)

サロンに置いてあるバタフライ式の仕事机と同じミッドナイトブルーのペンキを塗ったチェスト。鏡の近くにランプを置くことによって光が広がる(写真撮影/Manabu Matsunaga)

「このアパルトマンにバルコニーがついていたらパーフェクトなんですけどね。でも、このカルチェ(地区)から離れたくないという気持ちの方が今は上です」とカミーユさん。20年間でこの地区が変わっていくのを目の当たりにして、よりいっそう愛着が湧いたと語ります。

カミーユさんのアパルトマンは壁の色使いや、鏡の効果が最大限に活かされていました。部屋に入ったときに暗いとは感じず、むしろ生き生きとした空間が広がっていました。そして、建築家の知恵が散りばめられた一つの作品のようにも思えたのです。
今ではないけれど、引越すとしたら陽の光がたくさん入るアパルトマンを選びたいとのこと。このカルチェを始め、パリが大好きなので田舎や郊外で住むことはないと話していました。
外出制限が続くパリ。だれもが太陽の光を求めています。

(文/松永麻衣子)

(Manabu Matsunaga)

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