コラム

「ゴミには人間の本性が出る!」ゴミ清掃芸人・マシンガンズ滝沢さんインタビュー

(写真撮影/片山貴博)

賃貸でも分譲でも、住まい探しのときには「共用部のゴミ置き場をチェック」という話を聞いたことはありませんか? その大切さを多分、日本で最も痛感している芸人さんが、マシンガンズの滝沢秀一さんです。今回はゴミ清掃芸人の滝沢さんにコロナ禍のゴミと住まい、街のコミュニティのあり方まで聞いてきました。
ゴミ置き場は“伝染”する? ゴミ収集の目線で見た街と人の関係お笑いコンビ・マシンガンズで活躍している滝沢秀一さん。2012年、妻の妊娠をきっかけに、「出産費用を稼ぐため」としてゴミ収集会社の仕事に携わり、そこで見た風景・人間模様を『このゴミは収集できません~ゴミ清掃員が見たあり得ない光景~』(白夜書房)にまとめて出版し、これが大ヒット。ゴミ清掃員の日常をつぶやき風にしたり、ゴミからみるお金もち世帯とそうでない世帯の違い、物件の見分けかた、回収できるゴミとそうでないゴミなど、おもしろくてためになる内容がぎっちりとつまっています。現在も芸人活動の傍ら、週2日のゴミ収集の仕事、著作の執筆に大忙しの日々を送っています。

緊急事態宣言下で何が起きたのかをまとめた、滝沢さんの最新の著作『やっぱり、このゴミは収集できません~ゴミ清掃員がやばい現場で考えたこと~』(白夜書房)(写真撮影/片山貴博)

「2020年、コロナ禍で緊急事態宣言が出されたときは、本当にすごい量の家庭ゴミが出されて大変でした。通常、年末年始は大量のゴミが出るんですが、それが2~3カ月続く感じです。ゴミ収集はインフラなので行わないわけにはいきませんし、休めない。キツかったですね」と振り返ります。滝沢さんによると、ゴミ出しには住まいや街、人間の暮らしそのものが反映されるのだといいます。

「ゴミって、人間の本性が出るんですよね。人が見ていないと思うと、人は“なんでもアリ”になるんだなって思います。そうですね、ゴミ置き場のなかでも、目安になるのがペットボトル資源です。ペットボトル資源がキレイに出されている集積場はいつもキレイ。ペットボトル資源が荒れているところは、可燃・不燃ともに汚れています」と驚きの事実を教えてくれます。

たしかにペットボトルは中身を出してゆすぎ、キャップをはずして、ラベルを剥がし、分別すると手間がかかります。「めんどくさいし、ま、いっか」と時には分別もせずに捨てたくなる気持ち、身に覚えがありますよね。また、ゴミ集積所には「ある法則」があるのだとか。

「清掃員同士でよく話題になるんですが、ゴミ置き場の美しさ・汚さって、伝染するんですよ。汚い集積所があるとだんだん汚くなっていくし、反対にキレイな集積所があると周囲もキレイになっていく。これってつまり人の目やコミュニティがあるからなんだと思います」(滝沢さん)

『やっぱり、このゴミは収集できません~ゴミ清掃員がやばい現場で考えたこと~』(白夜書房)より(画像提供/白夜書房)

よい街はみんなでつくる。人とのつながりが街を、地域を変えていく滝沢さんは、ゴミ置き場が荒れているところは、人の目の行き届かないため、街に無関心な人が多くなって乱雑になる。一方、ゴミ置き場がキレイなところはご近所同士が助け合い、美しさを保っているのではないか……と長年の観察から推測します。そのため、ある程度、ご近所付き合い、地域への関心が必要だと考えるようになりました。

「人の目があると、やっぱり『○○班のゴミ』のように特定されるので、あまり乱雑にはできないのが人情ですよね。あと、ゴミの分別は、面倒くさいだけでなく、知らない・分からないという人も多いんです。そのため、自治体もチラシ類をつくってPRしているんですが、やっぱり人同士の会話・コミュニケーションにまさるものってないんですよ。教えてもらえれば、みんな分別するようになりますから。地域によっては清掃員に声をかけてくれる人がいたり、やっぱりよい街はみんなでつくるものだなあと思うようになりました」(滝沢さん)

(写真撮影/片山貴博)

まさかゴミの話から地域コミュニティの話まで行くとは、すごい展開です……。でも、ゴミの分別って分かりにくいですもんね。もちろん、行政からの告知も大事ですが、やはりご近所同士のなかで、聞ける・教えてもらえるのが一番であり、ゆるやかなコミュニティがあるほうが、人は住みやすいのではないでしょうか。

ただ、清掃の仕事をはじめたばかりのころは不燃ゴミのなかにアイスピックや包丁、かみそりが入っていて、怖い思いをしたこともあるそう。
「それに比べたら包丁や刃物をくるんで捨ててくれるなど、今はだいぶよくなりました。分別やゴミがひどいという話をしょっちゅうしているんですが、実は2000年以降、ゴミはゆるやかに減っていて、2001年度には5210万トンあったものが、直近では4272万トンにまで削減されました。分別も浸透し、若い世代は環境教育が浸透しているからだと思います」(滝沢さん)

環境省のゴミ総排出量のグラフの変化。こうして見ると、じわじわとゴミの排出量が減っているのが分かります(出典/環境省)

今、気になるのは食品ロス。分別も家族全員で取り組むようにゴミだけに限りませんが、小さなことだからいいや、1人くらいならいいやと軽く考えがちです。
「いやいや一人ひとりの積み重ねってすごいことですよ。可燃ゴミの中にビン・缶などの不燃ゴミが混ざっていると投入口の燃やす所が詰まってしまい、焼却炉の火を消して、詰まりを解消しなくちゃいけないんです。焼却炉の再点火にはなんと350万円もかかる。再点火の費用は、もちろん税金です! 小さな行動が大きく影響する例ですよね」といいます。今は一人ひとりの行動が街や地域を変えていくんだなと実感しているそうです。

2020年はコロナウィルス感染症、そしてレジ袋有料化と、ゴミ界隈にも大きな変化がありましたが、それ以上に今、滝沢さんが気になっているのが、「食品ロス」の問題です。

(写真撮影/片山貴博)

「お米とか、魚、野菜……。ほんとにびっくりするほど、食べものが捨てられているんです! 食品ロスの46%は家庭からって言われているんですが、その実感はありますね。大型連休明けやお中元やお歳暮の時期に手つかずの食べ物を回収するのはやっぱりつらいです……。足りないから買おうではなく、冷蔵庫にあるものでつくる、賞味期限や消費期限をチェックするなど、まだまだ、家庭でできることはあると思うんです。ぜひ、みなさんには知ってほしいですね」と力説します。

そのため、滝沢さん自身も今では自宅の冷蔵庫を小まめにチェックするようになり、消費期限・賞味期限を確認し、手元にある食材で調理するというスタイルに変わったそう。
「家族はチームなので、冷蔵庫を誰かがチェックすればいいわけです。『今日は○○の料理をつくろう』ではなくて、小松菜とたまごからできるものを考えるほうがよいでしょう。食材がなくても、お味噌汁とごはんだって立派な献立です。あと、子どもって大人や親の姿をよく見ていて、マネをするんですよね。だから、大人が分別していれば、子どもは自然と真似するようになる。うちの子どももしっかり分別できるように育ちました(笑)」

家庭ゴミは1回3~4袋を目安に!「年末年始は、大掃除・片付けしたゴミなどがでると思いますが、家庭から出せるのは1回3~4袋が目安です。それ以上出すなら、有料になる地域もあるので注意してください。ゴミ収集車の回収できる量は決まっているんです! あと、ゴミ袋の口はしっかり縛ってくれるとうれしいです! なぜか、“オレ流”を貫いて閉じてくれない人がいるんですよ……。口を縛ってないと、そこら辺にゴミが散乱して大変なんですよ、ぜひしっかり縛って出してください!」と、ゴミのネタはつきない滝沢さん。

ゴミ問題は教科書のような内容になりがちですが、そこはプロの芸人のトークで「宅配ピザのダンボールは油を吸っているから燃えるゴミです」「ごま油の容器に串を入れて燃えるゴミに捨てている人がいた。あれはさすがだった!」「永久保存版のビデオが捨てられていた。永久保存じゃないんかいっ」と自然と盛り上がります。そして現在、引越しを検討している人は、やっぱりゴミ置き場をチェックしましょう。滝沢さんのアドバイスだと「ペットボトルの日」のゴミがよさそうです。ぜひ、役立ててくださいね!

●取材協力
滝沢 秀一さん
ゴミ清掃員、お笑い芸人
1976年、東京都生まれ。1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。「THE MANZAI」2012、14年認定漫才師。2012年、定収入を得るために、お笑い芸人の仕事を続けながらもゴミ収集会社に就職。ゴミ収集中の体験や気づきを発信したツイッターが人気を集め、話題を呼んでいる。
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『やっぱり、このゴミは収集できません ~ゴミ清掃員がやばい現場で考えたこと~』(滝沢秀一 著、白夜書房刊)
(嘉屋 恭子)

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